第7話 (完結)

 電車から降りると、朝焼けが眩しかった。電車に向き直り、車掌さんにお辞儀をした。車掌さんは、こちらを見ることなく、電車を走らせた。次は、誰を誰の夢の中へと運ぶのだろう。

 帰宅すると、父親はもういなかった。母さんは、リビングのソファに座っていた。体を小さく左右に揺らし、手には錠剤が握られていた。僕は、ソファの前で膝をついて、母さんの手を握った。

「母さん、ただいま。今まで、ごめんね。これからは、僕と沢山話をしようね。母さんの話を聞きたいし、僕も聞いてもらいたいな」

「・・・お母さんね。とても嬉しい夢を見たの」

 それから、母さんは夢の話を聞かせてくれた。まだどこかぎこちなかったけど、母さんの顔はずいぶん柔らかくなっていた。

「ヒロの腕時計は、僕が預かるよ」

 母さんは目を丸くした後、泣き出しそうな顔をしたけど、何も言わず腕時計を渡してくれた。この腕時計は、母さんに持たせていては、いけない気がした。

 その後、ヒロの部屋に向かった。ヒロは、机に噛り付いて、勉強をしていた。僕の存在に気が付くと、悪態をつく訳でもなく、ただ気まずそうに顔を背けた。きっと、昨晩の出来事で、罪悪感があるのだろう。

「ヒロ、ごめんね」

 僕が謝ると、ヒロは驚いた表情で振り返った。そして、すぐに机に向き直る。

「・・・なにが?」

「僕のせいで、面倒な役目を押し付けちゃってさ。それから、これ」

 僕は、ヒロに歩み寄って、机の上に腕時計を置いた。ヒロは、怯えた顔で僕を見上げている。

「昨日の事は、僕が腕時計を盗んだ事にしておこう。父さんには、そう説明して謝っておくよ。それから、これからは、僕が腕時計を預かるから、家に帰ってきたら真っ先に僕の部屋に時計を取りに来る事。机の引き出しに入れておくからね。また父さんにバレたら、僕が盗んだ事にすればいいから」

 僕は、ヒロの頭を撫でた。すると、ヒロに腕を振り払われてしまった。

「じゃあ、勉強頑張ってね」

 僕が部屋から出て行こうとすると、『あり・・・と』と、ヒロの声が微かに聞こえた。振り返ってヒロを見ると、耳を真っ赤に染めていた。

 僕は、青色が一番好きだ。でも、赤色も可愛いと思った。

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夢幻鉄道 ~まっ青な世界とワルモノの盾~ ふじゆう @fujiyuu194

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