みんなの家

雨世界

1 ……みんな、みんな大っ嫌い。本当に嫌い。(そう言って君は大きな声を出して泣いた)

 みんなの家


 プロローグ


 ……みんな、みんな大っ嫌い。本当に嫌い。(そう言って君は大きな声を出して泣いた)


 本編


 普通がいい。普通が一番だよ。(でも、普通ってなに?)


 ずっと昔の美しい夢


 私は、夜の時間が好きだった。


 一日中、ずっと夜だったらいいなと思っていた。朝にならないで欲しい。昼なんてこなければいい。太陽なんて大嫌い。私はお月様が大好きなのだ。そんな風に思っていた。

 夜の闇の中にいると、とても安心することができた。


 だって、……誰にも会わなくていいのだから。


 1


 浅井真理にはずっと昔からある一つの悩みがあった。

 それは家族の悩みだった。


 だから真理はよく家出をした。近くの公園の遊具の中で夜の時間を過ごした。そんなときはいつもお母さんとお父さんが真理を迎えにきてくれた。真理はずっと泣いていた。真理はもう、自分がどうしてそなんい悲しい思いをしていたのか、その理由を高校生になった思い出すことはできなかった。(ただ、悲しい気持ちでいっぱいだった、と言う感情だけが感覚として真理の中に残っていた)


 真理は生まれたときからとても綺麗な女の子だった。


 真理の美しさは近所でも、真理の生まれた地方の町の中でもとても有名で(と言っても、今思うとそれほど私は特別に、『本当に特別なある一部の人たち』のように綺麗で美しいと言うわけではなかったのだけど)真理は子供のころからお母さんと一緒にモデルの仕事を始めた。


 それからいろんな仕事をして、高校生になった真理は今、アイドルをしていた。


 真理は別にアイドルに(モデルの仕事も)なりたいと本気で思っているわけではなかった。でも真理がアイドルになること。有名人になること。それが真理の家族の夢だった。(それはもちろん、モデルやアイドルという仕事に対する憧れだけでもなく、すごくたくさんのお金に対する期待もあった)


 真理はそんな家族の期待を裏切れなかった。(それに、真理も昔は自分にもっと自信があったし、本気でアイドルに憧れていた時期もあったし、自分ならある程度頑張れば本当に有名なアイドルになれると思っていたこともあった。世間知らずだった子供のころの無知な私のお話だ)


 そこそこ人気のあるアイドルグループに所属をしている星の数ほどいる、本当に輝く数人のアイドルの星を目指す、まだ万人の人にその輝きを見つけてもらえていない、暗い夜の中にひっそりと毎晩、光り続けている、そんなアイドルの一人だった。


「……はぁー」真理は本当に大きなため息を教室の中でついた。(真理の通っている高校はたくさんの芸能人が通っているちょっと特殊な専門のいわゆる普通ではない高校だった。真理の周りには、才能のあるすごくかっこいい男の子たちや、やはり才能のあるすごく綺麗な女の子たちばかりがいた)

「そんな大きなため息をついていると、幸せが逃げちゃうよ」と同じアイドルグループに所属している太田真央が言った。


「……真央。私、アイドル辞めたい」と死んだ魚のような暗い目をしている真理は真央にそういった。


「……え? 本気(まじ)?」とその太い眉を八の字にして、真央は言った。


「本気。今回は、本当の本当に本気」と青色の海を夢見ている真理は、そんなことを真剣な目をして(机の上に身を乗り出すようにして、ひそひそと二人で話をするような格好になって、親友の真央にそういった。


 すると真央はじっと真理の顔を見て、「アイドル。続けようよ。もう少しだけ、私たちと一緒にさ」と真理の手をぎゅっと握って真剣な顔をしてそういった。

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