Chapter 1『桃、再スタートする』 1-4

 わたしは、独りがいい。


 さっきスマホでググったら日本だって、じつに3組に1組が離婚しているというじゃない? 2組に1組になるのは時間の問題だと思う。

 おひとりさま万歳、万々歳! 

 孤独死をなくそうなんてナンセンス。


 そうじゃないの。


 孤独死・孤立死は「あり」として行政は対策するべきなの! 

 人とのつながりを拒否しても安心して生きていける社会を目指すべきなの!! 


 ――なんてなことを、若ソンチョーさんとの結婚を熱心に推してくるお母ちゃんに耳を傾けながら、考えたりしていた。


 思えばこれまでお母ちゃんが結婚に関して具体的に行動に起こしたことは今回がはじめてで、いわゆる適齢期とされる20代中ごろから30代も「働かないならささっと男見つけて結婚しろ!」と口ぐせのようにいっていたのは父だけで、お母ちゃんはそれをなだめるだけだった。

 お母ちゃんは、わたしの発達障害(当時はそんな言葉は医療現場でさえほぼ知られてはいなかった)的な面を危惧していたに違いない。


(このには妻として、母としてやっていくのは酷なのではなかろうか……)

と。


 だったら何故、今さら半ば強引に嫁がせようというのか……

 具体的な話はしたことはないけれど、そこは母娘 おやこ。お互い“覚悟”はできていたはずではなかったの? 

 

 きっとお母ちゃんは、衝動的に「この際もらってくれるならもう誰だっていい、やっぱりあの子を残して死ねない!」と脛を齧る、さらにはアルフォートまでも齧りつづける五十路目前の娘のために、老骨に鞭打ったに違いない。この見合い相手に巡り逢うまで、いったいどれだけパーティーに通いつづけたのだろう。10回? 20回? 30回? それともーー


 いくらクズなわたしでも、さすがに断ることはできなかった。 

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