鬼ごっこ6(終) Q市旧発電所 リーダー:オム
5時になって、街の各所に置かれたスピーカーからバラバラに夕焼け小焼けが流れ始め、
「しゅ~!りょ~!」
というナシルの声が、街中に響いた。
「誰が鬼?」
発電所にまた集まって誰ともなく聞く。
お互い顔を見あったり、指さしあったり手を振って否定したり。
「誰が鬼? 早く白状しなさいよ」
ナシルがつまらなさそうに言う。
しかし、誰も名乗り出ない。
そのうえ、誰もステッカーを持っていない。
「罰ゲームがいやだからって、ステッカーを捨てたの?
ほんとダーリン以外は馬鹿ばっかりね!」
ナシルの心底呆れた声に、オム以外はイラっとしてナシルが映るパソコンの画面を睨む。
「あれ? ナシル、それどした?」
ユリエルダがパソコンのキーボードを指さす。
そこには鬼の印のステッカー。
「な、なんでこんなところに!
ダーリンのパソコンが汚れるじゃない!」
「そこかよ」
ヤコがツッコむ。
「だってナシルもいっしょにあそんでるでしょ?」
フレアはきょとんとした顔。
「確かに、ナシルだけ参加してないとは言われてないしね」
ハーロンが同意すると、フレアは「でしょー?」と飛び跳ねる。
「んじゃ、バツゲームはナシルか」
アーサーがにやにや笑っていると。
オムがステッカーをペリペリはがして、アーサーにぺたりと貼った。
「は!? おにごっこはおわっただろ!」
アーサーがステッカーをはがすが、オムはパソコンを抱えて走り出した。
ナシルの声が発電所の放送設備から流れる。
「延長戦開始!」
その途端、その場の全員がアーサーから離れるように走り出す。
「ナシルのまけだろ! なんでだよ!」
アーサーが顔を真っ赤にして怒ると、スピーカーからナシルが答えた。
「ダーリンがリーダーだからよ。
リーダーの言うことは?」
「ぜったい! だろ!
くっそー。オムのやつぶっとばしてやる!」
地団太を踏みながら、アーサーは10数える。
「じゃあ、僕は門限があるから帰るね」
ハーロンが発電所の塀を飛び越えると、
「おまえだけずりぃぞ!」
アーサーが外まで追いかけてくる。
「いやいや、オムをぶっ飛ばすんでしょ」
「あ! フーちゃんも出る!」
「フレア、登れる? オイラが手伝うよ」
「結局場外ありかよ」
今日も変わらず日が暮れても走り回る。
彼らが好きなことを、好きなだけ、飽きるまで!
鬼ごっこ編 おわり
Villainy Brats! ニョロニョロニョロ太 @nyorohossy
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