鬼ごっこ5 Q市繁華街 リーダー:オム

「あ」

「お」

 スーパーの前でハーロンとメゾッドが鉢合わせた。

 お互いに一歩後ずさりをして距離をとる。

「メゾット、そのお菓子……」

「ド」

 素早くメゾッドが訂正する。

「失礼。メゾッド。そのお菓子もしかして」

 ハーロンがメゾッドの腕いっぱいのお菓子を指さす。

「とってきた」

「だろうね」

 当然というように答えるメゾッドに、ハーロンは肩をすくめる。

「あげねぇよ?」

 大事そうにお菓子を抱えるメゾッド。

「いらないよ、盗んだものなんて。無駄な犯罪にはかかわらないって決めてるんだ」

「あ、そう」

 メゾッドはグミを口に詰め込む。

 そのままメゾッドがハーロンに聞く。

「というかお前、おになはふの?」

「なんて?」

 黙ってグミを飲み込むメゾッド。

「お前鬼じゃないの?」

「違うよ」

 ハーロンはいつものニヤニヤした笑いで両手をひらひら振る。

 それを1ミリも信用してない目で見るメゾッド。

「信用してない?」

「詐欺師のヤツは信じれねぇよ」

「悲しいなぁ~。仲間でしょ」

 ハーロンが、わざとらしくハンカチを目尻に当てる。

 メゾッドはそれを見て顔をゆがめて唾を吐く。

「一回転しろ」

 メゾッドの言うとおり、くるんと一回転するハーロン。

 ステッカーは持ってないみたいだ。

 メソッドはふーんと相づちを打つ。

 しかし、変わらず疑惑の目でハーロンを見ている。

「まあまあ、信頼しろとは言わないよ。

 僕は近寄らないからさ」

 ハーロンは両手を上げた状態で一歩引いて、近くの塀に腰掛ける。

 それから自分の隣を示す。

「君も座ったら?

 そんなにたくさん持って歩き回るのも大変でしょ」

 メゾッドは示されたところのもう二歩遠くに腰掛ける。

 しばらくメゾッドがお菓子を食べているのを、ハーロンが眺めていた。

「きもい。おかしがまずくなるから消えろ」

 嫌悪や不快をハーロンにぶつける。

「はは、ごめんごめん。

 じゃあ僕は逃げるよ。ちゃんと10数えてね」

「は?」

 ハーロンは立ち上がって、お尻を指で示す。

(まさか)

 メゾッドはハーロンが指さしたあたりを触ると、ステッカーが貼られていた。

(アイツ、あたしが座る位置にあらかじめ仕込んでおいたんだ!)

「このやろう!」

顔を上げるとハーロンはすでに走り出していて、赤信号の先。

メゾッドは怒りに任せて両手のお菓子を投げ捨てる。

「1!2!3!4!5!6!7!8!9!10!」

 メゾッドは走り出した。

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