鬼ごっこ4 Q市内大通り リーダー:オム

 街は人の少ない田舎だけど、駅に近づいたら建物が多く、細い路地があるから逃げやすいはず。

「オムが発電所の外さ出てたんで、オイラも出たけど、電車乗るんはだめよね

 お金無いんで乗れねけど」

 訛りの強い独り言をつぶやきながら、ユリエルダは大通りを歩いていた。

 一緒に遊んでいるメンバーがいないか、時々周りを確認。

 と、そこに見知った顔が。

 オムだ。

 オムもユリエルダに気付くと、小走りで近づいてくる。

「ちょっとまって。オム。

 まさか、鬼?」

 オムが近づく分だけ、後ずさりしていくユリエルダ。

 オムは両手を振って否定する。

「違うわよ。ダーリンは鬼じゃないわ」

 ナシルもオムのポケットから大声で否定する。

 ユリエルダは半信半疑で立ち止まると、オムが追いついた。

「今の鬼はミズノトよ。

さっき会ったけど、ダーリンは華麗に逃げてきたの」

ナシルはキャッキャッとはしゃいでユリエルダに話す。

「そうか。それはすごいね」

「でしょう?」

 2人が話しているとオムがユリエルダの裾を引っ張った。

「ん、どうすたの。オム。」

 オムはさっき走ってきた方を指さす。

「ああ、向こうにミズノトがいたのね。

教えてくれてどうも」

ユリエルダが言うと、オムが満足そうな顔をする。

代わりに、小型端末からものすごい殺気が。

「私のダーリンに色目使わないでくれる?」

 ナシルの地を這うような低い声。

「使ってねよ!」

「ダーリンから離れろ!」

「はなれるよぉ!」

 ナシルの殺気に追われるようにユリエルダが走り出す。

(カップルって面倒くせ……)

 と、カサリと聞きなれない音が。

 何だろうと音が鳴ったあたりを見ると、服にステッカーが貼られている。

「あれ、いつの間に……」

 ハッとオムを見ると、ニヤリと笑っていた。

(いつも無表情のオムが見たことない顔してる……!)

 ユリエルダにステッカーを貼ったことがバレたオムは、すたこらさったと走り出す。

「や、やりおる」

 ユリエルダがオムを追いかけようとするが、ふと立ち止まって。

「いーち、にーい……」

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