鬼ごっこ3 Q市旧発電所 リーダー:オム
「このヤロー、まちやがれー!」
「い、いつまでおいかけてくるのー!」
発電所内の建物をミズノトとアーサーがぐるぐる回っている。
数分前にばったり会ってから、ずっとアーサーがミズノトを追いかけている。
アーサーに先回りするとかフェイントをかける脳が無い為、マラソンのようにずっと同じルートだ。
「ほかのひと、さがしにいけばいいじゃん!」
ミズノトが息絶え絶えに叫ぶとアーサーも大声で返す。
「うるせぇ! きゅうけいするからまて!」
「やだよ!」
ミズノトは建物の角を曲がって、アーサーの視界から消えた。
近くの扉に飛びついて中に入る。
「おい! オレサマがまてっていってんだぞ!」
アーサーが叫んでいるが、扉を閉める。
扉に耳を当てて、外の音を聞く。
本当に休憩をしているのか、足音は聞こえない。
(アーサーはバカだから、たぶんきづいてない)
一息ついて、休憩するミズノト。
何回も建物の周りを回ったのに、誰にも会わなかった。
アーサーもミズノトも叫びながら走っていたから、だれも近づかなかっただけかもしれないけど。
「みんなどこにいっちゃったんだろう」
ミズノトが呟くと、建物内の放送設備を介してナシルが
答える。
「ほとんど全員敷地から出て街に行ったわよ」
「え!? そんなのズルじゃないの!?」
「どこまでなんて一言も言ってないじゃない」
明らかにバカにしたような声色。
「そ、そんなぁ。
じゃあオムは?」
「ダーリンは早々に出て行ったわ」
ダーリンはアンタらと違って賢いもの、とうっとりした声で言う。
「じゃあぼくもそとにでよう。
あ、でも、そしたらナシルがひとりぼっちになっちゃうの?」
ミズノトがスピーカーを見る。
するとスピーカーからものすごい嫌悪感が発せられる。
「私は小型端末でいつもダーリンの傍よ。
ダーリン以外の優しさなんていらないわ」
ブツン!と思いきり放送を切られた。
「……」
ミズノトはしくしくと静かに泣いた。
「そとにでよう……」
扉を開けて一番低い塀によじ登ろうとする。
「あ」
「え」
次はアーサーを先頭に、またしばらく建物の周りをぐるぐるすることになる。
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