鬼ごっこ2 Q市旧発電所 リーダー:オム

 フレアは発電所の一番奥の部屋にいた。

 一番遠くまで来たのだから、ここまでは来ないだろう。

 ニシシ、と笑って、部屋の隅にうずくまる。

 だけどヤコには少し難しすぎただろうか。いつまでたっても外から物音もしない。

 仕方ないから、こっちから様子を見に行ってあげよう。

 もちろん捕まらないけど。

 部屋の入り口から外をちらりと覗く。

 誰もいない。

 が、廊下に飴玉が落ちていた。

「だれかがおとしたのかな?」

 駆け寄って、飴を拾い上げて口に入れる。

 視線を廊下に向けると少し先にも、その先にも飴玉が。

「わぁー!」

 また駆け寄って、幼い指で包み紙を開けて口に入れる。

 それを十数個ほど繰り返した後。

「ばぁ」

 突然、目の前にヤコが現れた。

「キャーー!」

 ヤコから逃げようとするが、両肩を掴まれてしまう。

「こんな罠にかかるとかバカだな。

 ってお前! あめ全部食ったのか!? 俺のだぞ!!」

 ヤコに持ち上げられて、ジタバタするフレア。

「クソ―! はなせー!」

「汚っ! 口の中飴玉だらけのくせに喋んじゃねぇ!!

 くそっ!」

 フレアをポイっと捨てて、自分も飴玉を口に入れる。

「いち、に、なな、じゅう」

 10数えて、フレアは額に張られたステッカーをヤコに張り返す。

「まてまてまてまて」

 走り出すフレアをもう一度捕まえるヤコ。

「全然違ぇから」

「いち、に、すぅ、じゅう」

「すぅってなんだよ。

 いち、に、さん、よん、ご、ろく、なな、はち、きゅう、じゅう」

「いち、に、さん、……ご、じゅう」

「好きなの言っていいわけじゃねぇから。

 指の数は十本だから順番に立てればいいんじゃねぇの」

 なるほどというように、フレアが親指から立てていく。

「あ、フレア。火ぃくれよ」

「火? いいよ!」

 フレアはポケットからチャッカマンを取り出して、カチカチ楽しそうに火をつける。

 チャッカマンはストッパーが壊れていて、フレアでも使える代物だ。

 ヤコはそれを器用に使って、たばこに火をつける。

 満足そうにタバコを吸うヤコ。

「10数えなくていいのか?」

 ハッとして、フレアは再び親指から立て始める。

 8まで数えたところで、

「チャッカマン返す」

「あ、うん」

 両手で受け取って大事そうにポケットにしまうフレア。

「10数えろよ」

「あっ、もうフーちゃんのじゃましないで!」

 もう一度親指から順番に立てていく。

「チョコいる?」

「いるー!」

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