22 反省

 エレベーターに乗ると、ふう、と息をついた。


 最近、正直かなりストレスが溜まっている。なぜこうならないんだろう、なぜこうなんだろう頭の中に疑問が浮かんでは積もっていく。


 「林、その生き方はしんどいぞ。」

 「ボランティアの組織経営」について卒業論文を書き終えたとき、教授は私にそういった。サークルでの不満や疑問を原動力にして卒論に向かう私が心配になったのだろう。


 昔から目の前のことや人のいいところを見つけるより先に改善点や疑問点が浮かんでしまう。それは自分に対してもそうだ。だから、私はどんな結果を出してもこれではだめだ、改善してもっといい結果を出さないと。なんで私はこうなんだろうと思ってきた。


 学校や友達には褒められることだった。「林さんは自己反省がよくできているね。」「吉ちゃんはストイックだね。」そう言われれば言われるほど、これは正しいことなんだ、自分の人生や社会を豊かにするためには反省をすることが重要なんだと思った。


 しかし、大学に進学してあの教授に会った。実習の反省会を見ていた教授は、みんなが改善点やよくなかったところばかりを挙げていくのを聞いて、「改善点ばかり挙げる反省は正確じゃないぞ。」といった。

 

 「現実にはよくなかったところもあるけど、いいところもあったんだから。今からはよかったところを挙げなさい。」と言われても、私たちはそんなことほとんど思いつかなかった。だって改善点ばかりを最初から探して実習していたのだから。


 それまで活発に意見を出していた私も急に何もしゃべれなくなった。だが、私はその後もその生き方をやめることはなかった。


 改善点ばかりを見るのは楽だ。改善点を見つけるだけで安心できる。そして何に対しても一歩引いていられる。


 「その生き方はしんどいぞ。」その意味が分からなかったけれど、今、このエレベーターの中でそれが分かりそうな気がしていた。





 


 

 


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