最終話 エピローグ
可憐がよもぎと
やがて
「
四人が一斉に声の方向に目を向けると、そこでは純白の
「シロ……シロなのね。でも、どうしてシロが」
続いてヒロキとよもぎも思い思いに再会の喜びを伝える。しかし九尾だけはその場で呆然とするばかりだった。
「ぐぬ、て、
「そうよ、シロ、私も聞きたいわ。シロは天命を果たしたんでしょ? なのにどうして……」
可憐もシロに問いかけた。シロは軽く目を閉じてひと呼吸つくとゆっくりと口を開いた。
「九尾に最後の機会を与えたのは
「はい、シロさん、よもぎ、頑張ります」
よもぎはそう言って小さく敬礼してみせた。一方その隣で憮然とソッポを向いたままの九尾をシロは強い口調で叱りつける。
「九尾! 貴様、聞いておるのか?」
「き、聞いておる、聞いておるのじゃ。よもぎといい、
九尾の態度に
「
可憐の脳裏にシロとの思い出と別れの場面がよみがえる。同時に混然一体となった様々な思いが涙となってこみ上げてきた。可憐はその感情を押さえようと両手で口を覆いながら肩を震わせていた。
その様子に心配したヒロキが可憐の肩にそっと手を添えて「大丈夫か?」と声を掛ける。可憐は「大丈夫よ」と小さく頷くと、涙を拭ってシロを見据えた。
「私なんかに何ができるかはわからないけど、シロ、これからもよろしく」
可憐のその言葉を受けてシロは安堵の面持ちとともに大きく頷いた。
今、ヒロキと可憐が並んで座り、目の前にはよもぎと
「よし、これですべては一件落着! 今夜の花火はみんなで観に行こうぜ」
――*――
午後八時、昨晩の雨がもたらした湿気は日中の日差しですっかりと消えて今では涼しい夜風が
可憐、よもぎ、シロの三人は
「九尾、おまえさ、暑くないのか、そんな恰好で。てかさ、メイド服で花火なんてあり得ないだろう普通は。ほら、見てみろよ、あそこの子どもたちもヘンな顔しておまえを見てるぞ」
「よいのじゃ。これは、このスタイルは
「おいおい、九尾、おまえ、意味を解って言ってるのか?」
すると突然に九尾はヒロキを指さしながらまくし立て始めた。
「そもそも何なのじゃ、これは。みんなそろって一件落着じゃとか、
そして九尾はなおも強い口調で言い放つ。
「そうじゃ、明日からは
「九尾よ、まだわからぬか。どれ、よもぎ殿、花火の前に露払いの火花でも散らしてみてはいかがかな」
「ぐぬぬ、不覚。
ひとりあたふたする九尾を前にしてヒロキ、可憐それによもぎの三人はまたもや呆れた顔を見合わせるのだった。
ド――ン! ド――ン! ド――ン!
開始の合図にまずは三発の花火が上がる。そして間髪を入れずに景気付けの連発、大玉と続いて再びの連発が夜空を彩る。
ヒロキは二人の顔を見ながらよもぎと出会ってからのことを思い出していた。そして、今さらながら気づいたようにつぶやいた。
「考えてみれば、可憐もよもぎも女の子、シロもシュッとしたきれいな女性だし、九尾も一応は女の子だよな、チビっ子だけど。ってことは……これってひょっとして、いわゆるハーレムってやつなのかも……あ痛ッ!」
自分の言葉が終わるより前にヒロキは
「九尾、おまえ、いきなり何を……」
睨みつけるヒロキの目に、にやけた顔で「上を見ろ」と目くばせする九尾の姿が映る。そしてヒロキが何事かと頭上を見上げたそのとき、その視界に映ったのは可憐、よもぎ、シロの三人が振り下ろす三つの
「イテッ!」
よもぎ☆スピリッツ ~押しかけ幽霊と理系男子は今日もいろいろ苦労する~
―― 完 ――
よもぎ☆スピリッツ ~押しかけ幽霊と理系男子は今日もいろいろ苦労する~ ととむん・まむぬーん @totomn
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