原初的な物語への衝動を思い出す、ジュヴナイルな掌編

「お題を使って一時間以内に書く」という企画作品。一見無茶な企画に思えるかもしれませんが、意外なほどその人の作家性があらわれる、面白い企画なのです。
滅亡を目の前にしてすべてをあきらめ、その歴史に幕を引こうとする人類。そんな絶望を前提にした世界のなかで、自分の道を進もうと飛び出した少女、サクラの旅立ちをえがいた掌編。プロット的な構造があるわけではないのだけれど、サクラのキャラクターが生き生きとしていて、楽しいのです。
むかし読んだ「キノの旅」をすこし思い起こします(あれ、そういえばキノもサクラだったっけ?)。彼女の旅を思い描きながら、絶望に打ち勝ってくれる日を、応援したくなります。