VII

僕は国籍を変えた。両親は東京で出会い、そこで家庭を持った。母は中国籍のまま、父の戸籍に入ることもなく、そして僕は当然のごとく日本国籍だったけど、父と離婚した母に引き取られた僕は中国籍を取得した。そして、母の実家に一緒に戻って、何ヶ月か遅れで元の中国の学校のみんなと勉学に励むことになった。日本国籍のまま中国の学校に籍を置くのは不利だったし、晴れて中国籍になれば大学などその後の進路も大きく開けるから。母があの時、日本で学校に通うなら、そして僕の日本語のレベルを考えて、一番よい学校を選択したかったのだろうし、つい父を責めてしまいながらも、できるだけ良い選択をしたかった気持ちも今ならわかる。今、中国に住み、中国の学校に通い、中国人としてその後の進路を選べる。それは今は母にとって納得できる最良の道だった。

学校の友達は僕の国籍が何だろうとこれまでと同じように受け入れてくれるけど、父はもういないのだし、母の子として中国人として新しく人生を歩み出すのだ。


世界中にストレスが蔓延し、中には狂気にまで追い詰められた人もいたこの災禍は、ワクチンも開発された今では、ほとんど新手の風邪と変わらないくらいの受け止められようだけど、あの巣ごもりの日々のせいで人生を劇的に変えられた人もいた。僕がそうだ。

何にでもがみがみ文句言う母の性格は変わってないけど、あの日以来、母のことをもっとずっと大切に思うし、父と結局は死に別れてしまったことも本意ではなかったから、一人になった母を支えて、これから少しずつ幸せになれるよう生きていこうと思う。

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シェルター・スケルター 迫峰 茉芙歌 @lestat0331

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