とり

@kazukazu55555

第1話

みんなに静かにしていてほしいと思っていました。

しかしその反面大騒ぎしたり大きな声で歌いたくてしかたなくなったりもしていました。

なので鳥の心はいつも北と南に引っ張られ続けているようで苦しい思いをしていました。

どちらかに行けたら楽なのですがとりにはどちらも素晴らしい場所のように思えましたし、またどちらも全くつまらない渇ききった場所のように思えました。


とりほどの激しい感情でなくても、一人でいる時はみんなといたくなるし、それなのにみんなでいる時は一人になるたくなるような気持ちになることは誰しもが持っているかと思いますが鳥はそれが他の人よりも一層顕著でした。

なので鳥はどこにいてもどこか楽しくなく、

世界のすべてがつまらないような、でもどこかに自分の居場所があるのではないかという気持ちを抱えたままいつもさまよっていました。


「魚は一生湖にいればいいし、アリは土の中の巣にいればいい。でもどこかにでも飛んで行ける自分はどこにいけばいいんだろうか??」

とりは迷っていました。ただただ毎日寝ているナマケモノたちの所で生きていくことも出来るし、逆にいつも世話しなく飛び回っているカンガルーの所で生きていくことも出来ます。

でもどちらも自分にぴったりとは言えませんし、もしかしたら自分はずっと一人でいるのがいいのかとも思いましたが、本当に自分がそれでいいと思っているのかいまいち分かりませんでした。


「どこに行くかではなくて、こいつと一緒ならどんな場所でも楽しいと思える鳥が一匹いればそれでいいんじゃないだろうか??」

とりはそう考えました。

なので本当の友だちを探しに飛び出しました。


最初に会ったのはフクロウでした。


「こんにちわ、フクロウさん、あなたはどんな鳥ですか??」

フクロウは眠そうな顔をしていましたがゆっくり答えました。

「私はみんなが寝ている間に飛び回り、みんなが起きている間に寝る鳥だよ」

と言ってまた寝始めました。


「みんなと違うなんて個性的で楽しそうだな、それに彼は孤独なあまのじゃくで気が合いそうだ。よし、彼と友だちになってみよう」

とりはそう考えフクロウの隣で寝始めました。しかし全く眠くありません。

でも鳥はどんなことでも最初は大変だし、慣れれば大丈夫だ、と思い一生懸命寝始めました。

そしてよく寝れないまま夜になりフクロウが起き出して飛び出したので慌てて付いていきました。

けれどフクロウと違い、とりは鳥目なのでまったく世界が見えません。

あちこちぶつかってろくに飛ぶことも出来ません。

フクロウはその様子を危なっかし気に見ていましたが、やがて「君は昼の鳥なんだから夜に飛ぶなんて無理だよ、それに昼に寝るなんて私にしか出来ない。私たちは友だちになることは出来ないんだよ、無理をしていては『本当の』友だちにはなれないのだから。

無理はしないでどこか別の友だちを探しなさい」

賢いフクロウはすべてお見通しでした。

とりはフクロウの言うとおりに諦めて、朝がくるのを大人しく待ち続けました


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