石油王の孫というチート設定によりハーレムをエクストリーム解決してトゥルーハッピーエンドを迎えるラブコメ

秋月一歩@埼玉大好き埼玉県民作家

石油王の孫というチート設定によりハーレムをエクストリーム解決してトゥルーハッピーエンドを迎えるラブコメ

「……実は俺……石油王の孫だったんだ……」



 ハーレムラノベの主人公よろしく様々なヒロインの好感度を上げまくった結果――俺、油井消雪(ゆいしょうせつ)は誰かひとりを選ばねばならないという状況に追い詰められていたのだが――。


 そんな中、俺はこれまでヒロインたちに隠していた事実を口にする。



「はぁっ!?」



 メインヒロイン格のツンデレヒロイン詰出麗夏(つんでれいか)が素っ頓狂な声を上げる。



「それはどういうことかしら?」



 次にクール系だが実は天然ヒロインという天然堂久雨流(てんねんどうくうる)が怪訝な表情を浮かべる。



「お兄ちゃん、それ、どういうこと~?」



 最後に妹系ヒロインの妹尾小妹(せのおこいも)が間延びした声で疑問の声を上げる。



 俺はヒロインたちに、向き直り説明することにした。



「先日、連絡が来てな……。実は、俺、某石油産出国の王族だったらしいんだ。で、流行り病や不幸な事故が重なって後継者が相次いで死んで、俺が石油王の座を継ぐことになった。俺はこれまで父の顔を見たことがなかったんだが……まさか、石油王だったとはな……未だに信じられないんだが……」



 まさかの展開に、ヒロインたちは絶句する。そりゃ、ただの平凡な高校生がいきなり石油王の孫にバージョンアップしたら驚くだろう。



「……俺は国に帰ろうと思っている。いずれ、そちらの国籍になると思う。……で、さ。よかったらみんなも来ないか……? そうすれば、誰かひとりを選ぶなんていうエンディングを選ばずに済む。うちの国は一夫多妻制なんだ」



「えええっ!?」


「そ、そんな、いきなり……!」


「スケールがでかすぎるよ~!」



 三者三様の反応を示すヒロインたち。


 だが、俺は言葉を継いでいく。



「俺はずっと思ってたんだ。ハーレムラノベってさ、だいたい最後はひとりを選ぶじゃないか。そうなると選ばれなかったヒロインたちがかわいそうだろ? そして、そのヒロインたちを応援していた読者たちも良い気分はしないと思う」



 だが、それは一夫多妻制が許されない日本だからだ。


 ついでに、高校生であるという財力的な問題があるからだ。



「でも、俺は……幸いにも石油王の孫だったんだ。だから、みんな俺についてきてくれ! ある意味異世界転生ものよりもチートだから! いくらだって財力無双することができる! 一生遊んで暮らせるんだぞ!」



 『一生遊んで暮らせる』というパワーワードに、最初は戸惑っているヒロインたちの表情が変わっていく。……そう。やはり、金の力は偉大だ。


 オイルマネーTUEEEEEE!なのである。



「い、一生、遊んで暮らせるんだ」


「……そ、それは……悪くない選択かもしれないわね……」


「ふえぇ……オイルマネーしゅごいよぉぉ……」



 ヒロインたちはオイルマネーの力によって屈服していった。


 目つきが¥や$に変わっている。



 さすがチートスキル『石油王の孫』。


 現実世界において、これほどのチートスキルはないだろう。



「というわけで、もう迎えが来てるんだ」



 ヒロインたちに詰問されていた場所は中庭だったのだが――。


 突如として校庭にロールス・ロイスが乱入、俺たちのすぐそばまで爆走して止まった。



「俺と一緒にトゥルーハッピーエンド……誰も悲しまないトゥルーハーレムエンドを迎えようじゃないか」



 ロールス・ロイスから降りてきた黒服たちは小気味よいキビキビした動きでドアを開き、俺に向かって深紅の絨毯を敷いていった。




 教室からは何事かと窓を開けて生徒たちが覗きこみ、職員室からは教師たちが出てくる。



 怒声を上げる体育教師なんかもいたが、ロールスロイスから遅れてやってきた黒塗りの車から出てきた政府関係者の背広の人たちから説明を受けるや困惑しつつも動きを止めた。



「……というわけで、行こうか。トゥルーハッピーハーレムエンドへ」



 石油王エンドという掟破りのエクストリームハーレム解決策。



 ヒロインたちはさっきまでの醜い争いをやめて、脂(油)ぎった中東スマイルを浮かべる俺に微笑み返した。



「あんた、本当に最高だわ……!」


「……やはり、お金の力には勝てないわね……」


「はへぇえ……もう一生、お兄ちゃんについていくよぉ……」



 ヒロインたちはオイルマネーの力で完堕ちしていた。


 だが、一抹の寂寥感を覚えたのは確かだ。金の力は、そんなに強いのか?



 それでも俺はヒロインたちを引き連れてロールス・ロイスに乗り込む。



「さらばだ、学園ラブコメの世界。俺にとって、この国は狭すぎる……」



 ニヒルな笑みを浮かべながら、俺たちを乗せたロールス・ロイスは発車した。


 こうして、俺たちは日本を脱出してトゥルーハッピーハーレムエンドを迎えたのである。




 ……なお、その後、原油価格が暴落して世界恐慌に陥り急転直下の没落エンドを迎えるのはまた別の話である――。


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