不登校

林花 集

不登校

目が覚める。外を見ると雨が降ってる。

時間を見るといつも通りの起きる時間。午前7時。僕を起こそうとする親の声が聞こえる。

「早く起きろ」

と。

(あぁ…)

ベッドから降り、リビングに向かう。

「おはよう…」

と、挨拶する。親からもおはようと返ってくる。

どうせ次来る言葉も分かってる。学校行け…もう聞きたくないから、知らない顔して現実逃避の二度寝をする。意味なんて無いのに。悪くなるだけなのに。どうせ返事をするのに。

「はよご飯食べて学校行き!」

「ん…」

その返事で理解したかのようにため息をつかれる。

「アンタ学校どうすんの! 行きたい大学 あんのに今休んだら高校中退なるやろ!?はよ行き!」

(あぁ…まただ…もう嫌だ…分かってんだよ…分かってんのに…)

「うるせぇよ!分かってんだよ!」

「分かってるんならはよ行きぃや!」

「うるせぇ!!!」

そう怒号を吐き捨てその場の嫌な空気から逃げる様に部屋に籠る。いつもと同じ様に。


(こんなこと言いたいわけじゃないのに。学校だって行かなきゃダメなことくらい分かってんのに…!!なんで!なんで…)


…傍から見たらただ、だらけてる奴にしか見えないだろうな。雨が降ってるから休もうとして、言い訳ばかりして…ハハ…馬鹿みたい…


全て気持ちの問題と言われればその通りなんだろうな、やろうと思えばやれる事だ、学校行く事なんて…朝ごはん食べて、歯磨いて、服着替えて、外に出るだけ…簡単だろ…?

それなのに…それだけなのに…それすら出来ないなんて…なんで…なんでだよ…





……


………


『集、お前ならその夢叶えれるって!頑張よ!』


『集、アナタならできるわ、頑張って!』


『いい夢じゃないか、それは頑張れよ、集。先生応援してるからな!』


『頑張れよ!』



…………………………………………

「…………ッ!!!」

身が震える。冷や汗が出る。息が荒くなる。


もう何回も聞いた言葉。


もう何回も自分に言いつけてきた言葉。


もう聞きたくない言葉。


最初はいい気分だった。期待されて、応援されて、出来る気がして、叶うような気がして。怖いものなんてなかった。


何時しかずっと言われ続けて、辛くなった。


頑張らなきゃって。なんでこんなこと出来ないんだって。周りが出来てることがなんで僕だけ…なんでって…それでも 頑張れ が聞こえて。

頑張って。

頑張って。

頑張って。


自分ならまだやれると思い込んで…


気がついたら、学校に行けなくなっていた。行っても勉強は着いていけず、辛くなり早退ばかりした。


最初の期待はもう無かった。それでも頑張れって言葉は期待に聞こえて頑張ろうとした。


「なんでそんなことも出来ないの!?昔はあんなに頑張れたでしょ!?」

「ごめんなさい…」


朝から行けないからせめて、頑張って行けるように遅刻で行った。


「お前、こういう時は学校来んねんな、セコいわw」

「アハハ…ごめん…」


そうすると残りの時間割が楽な奴ばかりで友達の軽い冗談で辛くなり。


「辛いだろうが、先生はお前が本当はできること分かってるからな、頑張れよ。」

「はい…」


先生からの呼び出しでは、前の様に出来ることを期待させるかのように言われ辛くなる。





出来ないなりに頑張ろうとしても、前の様に上手く出来なくなった。そもそも頑張ってたのかすら今は分からない。


ただ自分のやりたい事のために頑張ってたはずなのに。


夢だって、いっぱいあるのに。


やりたい事のためにやってたはずなのに。


こんな事しても何も変わらないのに…


もう生きる事すら苦しくなってきた…


なんで僕はこんなに…


こんなことになるなら、夢なんて………


誰か、助けて。

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