第8話 エピローグ

緊急脱出ベイルアウトして海面にパラシュート降下した私は、日本海の海上を一時間近く漂流していた。


幸いな事に二機のトマホークとも、爆縮レンズの安全装置が適切に作動した様で、海面への激突でも核爆発は起こらなかった。

しかし高井一尉シャインが脱出に成功したかは分からなかった。


私の頭上に小松救難隊UH60-Jヘリコプターが現れ、私はヘリコプターに吊り上げられ救助された。


ヘリコプターに乗り込むとそこには……。

「シャイン、高井一尉……。ご無事で」


そこにはずぶ濡れの高井一尉シャインが壁際に座っていて、私を見て笑顔を見せた。

「マノン、川上三尉。君もな……。よく無事で戻ってくれた……」


私は頷くと彼の横に腰を降ろした。救助隊員が私にヘッドセットを渡してくれる。


ヘッドセットのスピーカーから管制センターの声が聴こえる。

「こちら横田CCTだ。高井一尉、川上三尉。任務ご苦労だった。トマホーク二機は日本海に墜落して破壊された。核弾頭の回収は米軍が行う予定だ」


私は高井一尉と顔を見合わせて、大きく頷いた。


「武装を持たず任務を遂行してくれた君達に防衛大臣からも感謝の言葉が届いている。それ以上に君達が無事生還してくれた事を皆がとても喜んでいる。本当にありがとう」


高井一尉の顔に笑顔が浮かぶのが分る。

私も未曽有の危機から沢山の人々を守れてとても嬉しかった。


私はハッと私は思い出していた。確か……高井一尉は……。


「……あの、高井一尉……。無事生き残ったら、私を僚機バディに選んだ本当の理由を教えて頂けるとおっしゃってました……。でもそれは機密事項トップシークレットともおっしゃっていましたが……」

私は高井一尉を見つめながらそう聞いた。


彼が驚いた様に目を見開くのが見える。そしてゆっくりと首を振った。

「……仕方ないな。約束したもんな。君を僚機バディに選んだ理由は……、勿論、君の操縦技能の高さだ。シミュレーターで君に背後シックスオクロック取られた時は驚いたよ。でもそれから君を意識する様になって……いつも君を見ていた……」


「……えっ?」

私はその言葉に驚いていた。それって……。


「君に……惚れてしまって……、恋人バディになりたいと思ったんだ。だから……」


その言葉に私の鼓動が高まっている。

でも私はゆっくり溜息を吐くと上目遣いに彼を見つめた。

「一尉……。そんな私的な理由で私を選抜するのはフェアじゃないと思いますが……」


「ああ、分かっている。だからこれは機密事項トップシークレットなんだ……。」


私は心臓の高鳴りを抑える事が出来なかった。

実は私達……両想いだった……んだ。


「君の想いも確認しないまま……、俺の勝手な想いで申し訳ない……」


私は大きく首を振った。

「一尉、シャイン。私を選んでくれてありがとうございます。二つのバディ僚機と恋人に……」


私は両頬が火照って来るのを感じていた。心臓の鼓動はもう爆発寸前だった。

貴方シャインに逢う為にも、私は選ばれて生まれて来たんですね……。私とても嬉しくて幸せです……」


そう言いながら私は右手を彼に伸ばした。彼は戸惑いながら私の右手を握ってくれる。


その手はとても力強くて暖かかった。


FIN

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

選択の理由は? 美玖(みぐ) @migmig

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ