第7話 ダメージとイメージ
「おはよう晶久、調子はどうだ」
爽やかな朝に爽やかな天気、
........そして爽やかな笑顔の
「....お陰さまで
つい昨日こいつの顔面の良さに負けてお付き合いなるものが始まったわけだが、本音を言えば昨日の夜までは舞い上がっていたことを白状しよう。
だがたった今冷静になった。
朝方寮から出て廊下で鉢合わせ、流れるように一緒に登校するルートを踏んでいる途中で気が付いたのだ。
よく考えてみろ、学園随一のイケメンこと生徒会長様と犬猿の仲の風紀委員長が急に仲良くなるなんて可笑しくないか?
普段なら朝会ったら直ぐ様煽り合いが勃発してたっていうのに。
「どうした、浮かない顔だな」
「生憎お前と違って浮かない気分なんだよ」
わざとらしい溜め息で露骨な面倒くさいアピールをするも、神宮寺はなんとことやらと何処吹く風だ。多分反抗しようものなら昨日の話を持ち出してくるんだろうなぁ。
心底いけすかないが、如何せん今日も俺好みに整った顔がにやにやしているのは普通に眼福だ。無性に腹が立つ。
どうしたものか。
というか彼奴の急な態度の変化は周りにどう見えているのかと疑問が浮かんだ俺は、通りすがりの
「あー、京君。ちょっといいかな」
京君は相当驚いたのか肩を跳ねさせ、僕ですかと言わんばかりにその大きな瞳を見開いている。
「え、あ、はい!何でしょう!?」
「聞きたいことがあるんだ、....その、今日の彼奴、神宮寺。今日寮で鉢合わせて一緒に登校したんだけどな、....そういうのってあっちの親衛隊とかその他の生徒にどう思われるのかなぁ、と」
親衛隊の仕組みだとかは全く理解していないし、なんなら神宮寺の顔と逸人と勉強だけで一年過ごしてきたド阿呆の俺はこの学園の大まかなシステムしか知らない。
図書室の女神とかサッカー部の誰々が、なんていう周りと盛り上がれそうな噂を聞くだけ聞いて神宮寺の顔を拝む毎日を送っていたせいだ。十中八九俺が悪い。
「お二人がどう見えているか、ですか?....僕は篁先輩が幸せそうで何よりですって感じですね」
ふふん、と鼻をならしてサムズアップする京君。
面食いの俺から見ても随分可愛いサムズアップなのだがそうじゃない。
今なんていった?
「俺が幸せそう、...?」
「はい!朝から生徒会長に会えて嬉しそうですねと先程までいた小雪先輩と見守っておりました!」
「........京君、俺そんなに嬉しそうだった?
」
おかしいな、物凄く不機嫌面してたはずなんだが。
「というか、嬉しそうだなんだは親衛隊の一部の人しか気付いてないと思いますよ?どうせみんな"ついに生徒会長の方から風紀委員長煽りに行きはじめた"くらいにしか思ってませんから」
楽しそうに笑いながら言われても俺は全くもって楽しくない。
親衛隊ってもっとこうモンペみたいなガチ勢の集まりと思ってたけど、そうでもないようだ。
そういえば神宮寺の親衛隊は初恋を引きずってることも含めて推していると聞いたことがある。詳しくは知らないが多分寛大なのだろう。
さて、聞きたいことは聞けたわけだが京君からの視点の話なので鵜呑みには出来ない。
少し警戒しつつ日々を過ごすのが最善だろう。
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「....嫌々言うわりに別れるとかは言わないんだね」
おにぎり片手に空いた片手でパソコン作業をする俺に逸人が語り掛けてきた。
「そりゃあ一日で別れるってのは............そんな目で見るなよ。あれだろ?....逸人が気遣いで言ってくれてるのは分かってるし何が言いたいのかも分かってるさ」
建前を並べようとした途端、不思議そうに質問をしてきた逸人の目はじっとりとしたものに変化した。
幼馴染みに建前は通用しないらしい。
「俺はな、神宮寺の顔が好きなだけで内面を好きって訳じゃない。神宮寺だってまだ昔の俺と今の俺を重ねて無理矢理初恋を投げつけてきてるだけだ。こんなの恋愛じゃない。それにほら、今さっさと別れるよりかは暫く付き合ってたほうが現実に気付くだろ」
俺も彼奴も大概だよなって話。お高い上っ面だけ好きあってたってそんなの恋愛とは呼べないと思う。
「ふーん、.......晶久がそれでいいならいいけど、付き合うならちゃんと周りの目も気にするんだよ。晶久は兎も角神宮寺はかなり気にしないタイプみたいだし」
「それは承知の上だ。なんなら今日身をもって体感したしな」
朝っぱらから笑顔という名の大砲ぶっぱは勘弁してほしい。
最低で最高の風紀委員長 逆膝枕 @hizamakura
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