過去と今、多摩と京、土方歳三と近藤勇。それらを絡め取るのは黒い絹糸と女の影。この短い中で過去と現在の朋友ふたりをリンクさせる構成の妙味もさることながら、五感いっぱいに情景を堪能できるのが何よりの魅力ないし魔性。あまり多くは考えず、ただひたすらにこの艶に酔いしれるような感覚は、それこそ肉感的な女体に溺れるようでさえあります。
土方歳三の石田散薬行商の道行きと、武蔵野の原風景が、一幅の画を見るようでした。後半の京都の、艶っぽい絹の質感や手触りが伝わってくる段、京にありながら五日市がついてくる、というところに、上手い!と唸りました。