第47話

 浦宮御影は天才であった。


 幼少期よりあらゆる学問に励み、それらを瞬く間に極めていった。


 彼が自分こそ一番すごい!と、なんとも子供らしく慢心していた頃に『そいつ』と出会った。


 そいつは御影と同じレベルのようで異なる、どこか遠いところにいるような気味悪さを感じさせる少年だった。

 御影は全てにおいて少年に負けていた。終いには得意としていた機械分野も彼の方が上手。

 

 中で自信というものが音を立てて崩れ去った。


 周りの友達も気がつけばその少年の取り巻きと化していた。御影はただただ恨み、憎み、嫉妬した。

 全てを彼に奪われたような気持ちで日々を過ごしていた。


 そんな時だった。そんな御影の心境など構いもなしに(他の人が御影の心境を知るわけがないが)その少年は話しかけてきた。



「なぁ、なんでいつも一人なんだ?」



 その最初の一言だけでコイツとは一生仲良くなることはないと思った。自分が独りなのはお前のせいだ!と、怒鳴ってやりたかったが、少年の眠そうな目を見たら気が抜けた。冷静になって考えてみるとその少年は何もしていないのだ。

 別にその膨大な知識を見せびらかしてきたわけでも、意図的に御影の友達を取ったわけでもない。


 よく思い出してみると前より減ったとは言え確かに友人達は御影を誘ってくれてはいたのだ。


 負の感情により周りが見えなくなっていたのだろうか。


 なにかが自分の中で晴れていくような気がした。ずっと嵐の続く中で突然、太陽の光が差し込んできたような、そんな感じだった。



「なんとなく。」



 そう答えるとその少年は首を傾げた。



「独りでいるのが好きなようには見えなかったけどな。あ、良かったら一緒に遊ぶか?ちょっとラジコンつくって競争してるんだけど...」


「ら、ラジコン??」



 学校でラジコンなんか作るのかと驚いていると、その少年は笑いながら得意だろ、そういうの。と全てを見透かしたように言った。

 彼は自分を見ていたようだ。


 はっきり言って御影と少年は釣り合わない。差が大きすぎるのだが、彼は同レベだろ?と、さもあたり前のように言った。


 その言葉は嬉しくもあり、悲しくもあった。



「あ、僕の名前は新世宇界。よろしくな!」



 そう、元気に名乗る彼を見て色々とどうでもよくなった。



「知ってる。いろんな噂で聞いてますんで。」


「え、噂って何だよ」


「さぁ、何でしょう?」


「ちょっ、教えろよ!!気になるじゃねーか!」



 そうして今の宇界と御影の関係ができあがった。宇界は笑わなくなり、御影は更に幅広い技術を身に着けて。

 

 双方とも昔とは別人のように変わってはいるが、どうやらその関係だけは変わっていないらしい。

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