第45話
目の前には暗闇に、バチバチと音を立てては光っているコードがあった。
「あー、うわー、ここをバッサリやられたかー」
「少し厄介ですね。そこは丁度予備エンジンとも繋がるサブコードとメインコードの合流地点、一応そう簡単に切断なんてされないよう、かなり頑丈な素材で作っていたはずですが...」
「あぁ、その辺りだけはウルツァイト窒化ホウ素で覆っていた筈だ。だが見ろ。見事に取り外されている。」
ウルツァイト窒化ホウ素というのは、ダイアモンドよりも硬いとされる物質だ。
ダイアモンドは炭素の塊で、燃やせば喜んで燃えてくれるような物なので何かを守るという役割には向いていない。
「本当だ......キャプテン、これは取り外し可能になっていましたか?」
「あぁ、一応万が一のことがあった場合に外すことができるように作られていて、普段はそこに8つの鍵が掛かっている。」
「でも、全て外されている...と。」
つまりは、犯人はこれらの鍵の在り処を知っている人物ということだ。
事態は思ったよりも深刻なようだ。
この事件、誰かの単独犯行である可能性は薄い。
単独である場合、機械班員である可能性は殆どゼロに近い。
彼らは皆この船の重要機密を知っている。故に、彼らの行方は全て僕に筒抜けになるようになっている。
機械班員が全員所持している、コントロールルーム等の重要機関に出入りする為に必要なICカードがある。
それにはGPSもついており、僕のPC、スマホなんかで見ることができる。
そして、そのICカードを使ったときには僕に連絡が来るようにもなっている。
だが、エンジン管理室に誰かが入ったにも関わらず僕のスマホには一つも通知が来ていない。履歴にものっていない。
つまりはハッキングされたと見たほうがいい。
それも相当の手練に。恐らくは僕や御影レベルだろう。
機械班員の腕では、数名を除けばかなり難しいと思われる。
まぁ、協力してやったなら話は別だが。
この犯人が御影な可能性は否定できないが、ほぼゼロに近いと言っても過言ではない。
御影がやっていない証拠は何もない。その上、僕の知る限りこの船を軽々とハックし得る程の腕前を持った奴はあいつしかいない。
あいつは性格こそアレだが、頭脳は僕に匹敵するからな。
だが、御影はこんな事をするような奴じゃない。
それだけで僕の中のあいつへの疑いは消える。
第一、この船をハックしたとして、御影になんの得があるんだ。
船が動かなくなったらゲームオーバーだろうに。
いや、それなら犯人も同じだ。
もし、僕らが治すことが出来なかったらどうするつもりなんだ。
普通にシステムの遮断なら、僕を排除しようとしているだけなのかも知れない。
だが、コードの切断とまで来ると......
犯人は、集団自殺願望でもあるのだろうか?
僕にはそいつの考えが解らない。
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