第44話

「私の名前は孤狐椿つばき、いつも弟がお世話になっております」


「え、弟ってミヤギか?真面目に?」


「はい、私とミヤギは双子でして。」


 なら、椿も関西弁を喋ったりするのかと疑問に思ったが、特に口には出さなかった。

 確かに、言われてみれば椿とミヤギはよく見るとかなり似ている。

 髪型や纏っている雰囲気オーラが違うので気が付かなかったが。


 髪型さえ変えて、切れ目を糸目にすれば完全にミヤギだ。


「椿の方が兄なのか」


「はい、ミヤギの我儘な所は弟だからという理由もあるでしょう」


「そういうもんかねー」


「キャプテンにもご兄弟がいた筈では?」


「おー、よくお世話になったってな。ありがとよ」


「いえ、私は基本イギリスにいたので恐らくはミヤギが...」


「そっか。じゃあ僕の弟には会ったことがないのか?」


「はい、残念ながら」


「あいつは意外と結構かわいいぞ」


「おや、私の弟も可愛いですよ?」


 と、二人で弟自慢をする。景夜は僕のことが嫌いらしいが、僕は普通に好きなので嫌われているのは少し悲しい。

 でも、かわいい所は結構知っている。男でも『かわいい』というのはあるようだ。

 景夜って未だに食事中頬にご飯粒がついてたりするんだよな。

 まぁ、極偶にだが。


 暫く弟自慢で盛り上がっていたが、途中で今はそれどころじゃないと気が付く。まだ少し語り足りないのだが、それは船を直した後でいいだろう。


 本当、危機感がないのは僕の欠点だ。


 だが班員の名前を聞くくらいは良いだろう、と言うことで自己紹介を再開した。


「コナー・リンソン、23でアメリカ出身でス」

「中国出身、ルオ 月鈴ユエリン、歳は20です、ユエで良いです」

「レア・ヴィリエ、21、フランス生まれです」

「ロン・ウィカード、24歳、カナダ出身です。」

「ジャック・ロウマン、歳は22。ロシア生まれのアメリカ育ちです。」

「ジョシュア・ツリー、23でブラジル出身です」


 皆殆どが違う国出身で、世界中の人々がこの船に集まっていることが実感できる。

 で、一つ問題がある。僕がこの人達の名前を覚えることができるかだが...恐らくは無理だろう。

 なので地道にちょっとづつ覚えていくことにしよう。覚えるまではあの金髪が―――になるかも知れないが。


 そう言えば金髪ストレートのお姉さんはフランス人だったのか。道理で顔立ちがスッとしていると思った。


「コナー、ユエ、ロンは僕とエンジンに。レア、ジャック、ジョシュアは燃料タンクを見てきて欲しい。」


「「「了解」」」


 そうして僕はエンジンまで来た。特殊な三角ドライバーで外側を外し、エンジン内部を覗く。

 その先には真っ暗な内部とバチバチと光る、他に比べると一回り太いコードだった。


「あー、うわー」

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