第42話

「吹いたな、氷の......間欠泉が」


 それはエンケラドスの、僕らから見ると下の方で吹いていた。

 大気が薄いので宇宙からでも見れるのはなんだか嬉しいな。


「あと20秒で着地です!18、17、16―――」


 カウントダウンが始まる。

 僕らが丁度着地しようとしているところから間欠泉が吹いたら面白そうだな、なんて幼稚なことを考えてしまったのだが、幸い読者の皆様意外知らないだろうから、どうか内緒にして欲しい。


「3、2、1!!」


 無事着地だ。

 エンケラドスは、エウロパよりも10倍くらいは白かった。

 これが本当の天然氷?


 エウロパは溶けては固まるのを何度も繰り返していたので変な茶色の筋ができていたので、完全に真っ白だったわけではないのだ。

 土が混ざった雪のような...そんな感じの色が所々あった。


 だが、このエンケラドスは違う。これは本当に真っ白だ。青ささえある。

 これが本当の青白い、か。


「さっきの間欠泉は?」


「残念ながら、もう終わってしまったと思われます。」


 次のを待つしか無いか。だが、他の船員はさっき宇宙からみた間欠泉に気が付いていないだろうし、ここで驚かすのも悪くはないかもしれない。


 僕は放送用の機材の電源を付け、マイクをとる。


『はい、皆さん窓の外にちゅーもーく。それ以外のもの見てたやつは...そうだな、輝羅々にボコってもらう。知ってるだろ?県大会、全国大会、世界大会のトロフィーを勝ち取りまくったメスゴリラ』


「だぁれがメスゴリラだぁああああああ」


 輝羅々はこの近くにいないはずなのに。何故か少しだけアイツの叫びが聞こえたのだが。

 だが、僕は気にせず続ける。


『ボコられたくなけりゃ外見とけ。面白いもん見えるから』


 そう言って機材の電源を切る。


 輝羅々は意外と便利なものだ。アイツがいれば喧嘩なんかが起こっても一瞬で収まるだろう。

 まぁ、喧嘩していた人たちは医療室行きだがな。


 この船には小さな病院のようなエリアがある。そこには大まかには3つ、保健室、医療室、手術室がある。


 保健室は軽いけがや、捻挫なんかの学校で治療できる範囲の小さい怪我をした時に行く所。一応骨折なんかもこっちだ。4等分されていない限り。


 医療室は病気とかの病院に行くような怪我や病気の時に行く部屋。


 手術室は言わなくても解るだろうが、手術をする部屋だ。普通に生きていればそうそうお世話にはならない場所だ。まぁ、持病のある人は別だが。

 

 僕の喘息はそれ程重いものではないので吸入さえ常備していればその病院エリアにお世話になることはないだろう。


 だが、それでも激しい運動なんかはできるだけ避けたいので輝羅々や黄昏が後々役に立ってくれるだろう。


 第二の地球での労働は彼奴等に任せた。


 これで第二の地球で漫画をゆっくりと読める!


 と、そんなことは置いておいて。


 僕は機械班の半数を連れ、船の外へ出る。

 相変わらずの空の広さに少しだけ感動する。建物がないと本当にスッキリするな。


 僕が一歩踏み出した、その時だった。


 目の前で氷が勢いよく吹き上がったのだ。


「最......高......!!」

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