第41話
僕は再びコントロールルームへ来ていた。
どうやら、そろそろ着地の準備を始めるらしいので呼ばれたのだ。
千寿達と言った、コントロールルームに用のない奴らには帰ってもらった。
信じてはいるが.........念の為、だ。
「何処に降りる予定だ?」
「はい、この辺りで着地するとなりますと、やはり衛星の一つになります。その中で、タイタン、ミマス、エンケラドスのうち、どれか一つに降りようかと。」
「んー、なんでそんな微妙な感じなんだ?大きい順とかでも良いだろうに」
「普通にテティスやディオネのような、なにもない星にとまっても皆さん飽きるでしょうから、少なからず特徴のある衛星のほうが良いかと思いまして。」
確かに、タイタンは土星の衛星、地球から観測できるものでも少なくとも10以上は発見されており、調査により次々と新たに発見されている無数の衛星達の中で一番大きく、生命の存在の可能性があるとされている。
それに、ミマスはそれ自体は特になにもないが土星の輪の大きな溝、カッシーニの間隙に位置するある意味特別な星だ。
エンケラドスはとにかく素晴らしい。地球では想像もつかないような現象が起こっている。
顔だけでなく、気も利くとは...もう完全にイケメンだな。非の打ち所がない。
「エンケラドスに降りる。生命だなんだ言っても一般人は興奮なんてしないだろうし、カッシーニの間隙に位置しているなんて言っても特に反応はないだろう。ならばあれを見せるしか無いだろ?」
「そうですね!」
その男は満面の笑みで他の班員に伝えに行った。恐らくは班長的存在なのだろう。
このイケメンが。
僕は窓の外を眺める。何処までも続くような暗闇に、まるでこぼしたかの様に散らばっている星々。
左には土星があり、環が広がっている。
宇宙は、森の中を延々とサイクリングしている時のように風景は10メートル進んでも1キロ進んでも殆ど変わらない。
ただ、星に囲まれているだけ。
だから、本当に進んでいると実感させてくれる惑星達は特別だ。
特徴しか無い惑星達を見ていると宇宙にいるという事を改めて認識させられるから良い。
僕もやっぱり、この船のあまりの快適さに危機感などが薄まってきていたから。
他の皆もそうなんだろうな。宇宙食でも食べれば実感が湧くか?
宇宙食のアイスクリームは何かと最高だし、この問題を解決することが出来たら皆に振舞ってやろう。
「キャプテン、そろそろです。あっ!」
「なんだ」
いきなり声を上げるのでそいつの目線の先へ目をやると、エンケラドスから白いナニカが飛び出した。
僕は思わず笑みを浮かべる。
「吹いたな、氷の......間欠泉が」
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