Betrayal

第37話

 警報がなり、赤いライトが点滅する。


「なにが.......?」


 僕は一瞬混乱するが、すぐに冷静さを取り戻す。


「機械班!船の状態を確認!異常があれば報告!」


「「「は!」」」


 いま、船中に五月蝿く響いているこの警報は3段階ある危険信号の中で、2番目にヤバいと言う時に鳴るものだ。


「え、何?え、え??」

「............」

「なにが??」

「う、うわぁあああああ!」


 勲たちも、いや、勲は何故か無言だったが。千寿たちがパニックになり始めている。

 いや、正確に言うとパニックではないのかも知れない。千寿は今の状況があまり理解できていないだけで意外と落ち着いてはいるし、黄昏も厨二病を発揮せず......


『厨二病を発揮せず』!?もしかして、あいつかなり混乱してるのか??


 唯一は普通に叫んでいる。混乱しまっくておられます、はい。


 唯一が混乱しているってことは外はパニック状態だろう。

 それをちゃんと止めなければいけないのだが......


 あぁ、もう面倒くさい。皆がパニック状態の時なんか普段の100億倍は面倒くさい。◯空せ◯くう、『百億』って便利だね。


 まぁそんな事は置いておいて。こんな時こそあの王様志望の王道サマに手伝ってもらいたいんだが、本当にあいつは何処にいるんだ?


 最近、どこを探してもいないのだ。もしかすると、ただ単にすれ違いまくったりしていたからだけかも知れないが、5日程探しても見つからないのは明らかに異常だと思う。


 少し、考えたくもない嫌な予感がし始める。


 僕はいつも、最悪のパターンを最初に想像する。それが良いとも、悪いとも言えないのだが、僕としてはそれの対策ができる、事前に防ぐことが出来たりするのでどちらかと言うと良いと思うのだが。


 あぁ、もしも。もしも、もう一つの派閥があったら。それが僕を邪魔だと思っていたら。

 もしも、僕を殺そうと思っていたら。


 いや、殺すは考えすぎだろう。だが、明らかに僕を困らせる、或いはキャプテンの座から引きずり降ろそうとしているように思える。


 少し前の自分なら喜々としてその座を譲っただろう。


 だが、最近はキャプテンとして皆を動かしていきたいと思うようになった。まぁ、相変わらず面倒なのは変わりないが。


 仮に派閥ができていたとして...王道の5日間の不在。いきなりの警報。あの例のパニックの件...


 それから出る結論は






 『王道は僕を裏切っている』






 そう考えると胸が痛む。こんな事は初めてだ。

 

 

 

 あぁ、信じていたのになぁ

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