第36話

「あ、それと...さっき扉の外に不審人物がいました」


 ...............。


「は?」


 覗いてたってことか?それともウロウロしているとか?


「目がツーンとしている狐野郎です。シメてきましょうか?」


「物騒だな、おい」


 ミヤギのことか?目がツーンの狐野郎っていうのは。だが、何故あいつがコントロールルームの扉の前にいるんだ?

 普通に過ごしていればこのコントロールルーム辺りには来ないはずだ。

 

 さては.........道に迷ったか。


 このコントロールルームへ来る道の一つ前には十字路があり、そのまた前にはT字の分かれ道がある。


 この辺りはかなり迷う確率が高いのでミヤギもそうなのだろう。


 だが、ミヤギって道に迷うような奴じゃないと思うんだがな。まぁ、ここ数日の印象で、だが。


「その外にいるやつをこの部屋に入れろ。多分だが、そいつなら大丈夫だ。」


 本当は一般人よりもミヤギの方が百万倍は大丈夫ではないのだが、宇界達にはそれを知る余地もないのである。


 そうして、その男は入ってきた。狐を思わせる茶色の髪を揺らせて、その細い目を更に細めてはニタニタと笑う。


 やはり、ミヤギだった。


 こいつは万年胡散臭さ百万%だな。未だにミヤギの正しい扱い方が解っていない。誰か取扱説明書でも持っていないものか...


「いま、オーロラ見てるから一緒にどうだ?」


「あははっ、じゃあご一緒させてもらいますわ」


 そう言えば、千寿が目隠しを外したときから静かなのだが...


 僕は窓の方を向くと、感動に固まっている千寿が目に飛び込んできた。


「千寿、ハッピー・バースデイ」


 僕は、そう一言声をかける。オーロラを楽しんでいる千寿を邪魔したくはないからな。

 小学校の頃から一緒で、中学も同じ。

 あいつはよく喋るし、表情豊かでいつもニコニコと笑っている活発な奴だ。対して僕は面倒くさいからあまり喋らないし、表情は基本的には真顔。一応笑ったりもするが、中の良い奴と一緒のときだけだ。僕が活発か、なんて言わなくとも解るだろう。

 そんな、僕とは反対の性格の千寿が、何故僕とそんなに長くも一緒にいるのかが不思議だったが、今ではもうどうでもいい。

 

 勲も、千寿も、面倒だけど黄昏も、最近出会ったばかりだけど唯一も。あいつらがいると毎日が飽きない。人付き合いは面倒だけど、あの自由人な四人を相手することができるんだ、キャプテンも意外と務まるのかも知れない。


「ありがとう、宇界クン」


 そう言って千寿はニッコリと笑った。今年一番の笑顔だ。僕もフッと笑う。つられ笑いだ。


「宇界!最近コメディが少ないぞ!どうなってるんだ!」


「コメディを中の人僕らが求めるな!そういうのは外の人作者とかに言えよ!」


 せっかくの場の雰囲気をぶち壊しおって...許さん。


 確か、次はそろそろ唯一の誕生日だったか。


 そんなことを考えていると、船がドガンという音とともに大きく揺れた。そして、赤いライトがブザーのような音と共に点滅し始める。


「なにが........?」

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