第35話

「勲、唯一、黄昏、土星の北極にある『謎の六角形』って知ってるか?」


「「「え?」」」


 やっぱり知らないか?


「え、六角形って、ピラミッドの六角形バージョンとか?」


「凄い想像するな。土星にそんなものがあるわけ無いだろ」


「はは、だよねー」


 唯一もそんな馬鹿げた事を言ったりするんだな、今までちょっと印象というか存在感と言うか、なんだか薄〜いやつと思ってあまり唯一の事知らなかったから驚いた。


「六角形?ロク・カクケイ准将ではないのか?」


「いや、誰だよ!」


「カクケイ准将を知らんのか!?彼はかつて憎き勇者一行を根絶やしに―――」


「勲は?」


「サッパリ!」


 だよな。ここで勲が知っていたら明日くらいに船が壊れていたと思う。


「実はだな、土星の北極あたりに六角形の模様があるんだ。」


「「「模様?」」」


「模様と言うか渦と言うか...土星の北極部分をスプーンでかき回したようになっている。」


「それは一体なんなの?」


「それが未だに謎なんだ。面白いだろ?丸じゃなく六角形だ。なにがどうなってああなったのか......!」


「うーん、熱くなってるとこ悪いんだけどさ、宇宙凄いぞトークで一話くらい使うのやめようよ」


 先程から目隠しをされたまま静かに座っていた千寿から声がかかる。


「あー、すまん。そろそろ良いかな」


 僕は千寿の目隠しを外す。僕らの前にある大きな窓からは、ゆらゆらと激しく動く、オーロラが輝いていた。

 普通のオーロラだと、ゆっくりと揺れるものだが、今回は太陽風が強かったので信じられないような速さで揺れ動く。

 

 それはまるで、ワルキューレがいつもの3倍の速さで夜空を駆け抜けているようだった。


 ここから見ると土星を駆け抜ける、だが。


 確かに僕らの目の前にあるオーロラは緑や黄色といった色はなかった。なんだか少し斬新な感じだ。


「宇宙からみると輪っかのようになってるんだな!」


「あぁ、そのあたりに太陽風が一番あたってるからな」


「指にはめれそうだ!」


「結婚指輪かよ」


 千寿とお揃いでってか?勲は土星で千寿は木星みたいな。


「いや、頭に乗せるだろう!あれはかつて、大天使ミカエルが置いていった伝説の―――」


「黄昏、厨二病出さなくても良いんだぞ?」


「俺は厨二病じゃない!他の雑魚どもとおなじにすんな!頭に乗せれば天使だろう!?」


「阿呆ですか。本当、この世に厨二病というものがあるだけで阿呆が増えるので止めていただきたいものです。」


「あーはいはい.........?......なんでここにいるんだよ」


 気が付くと背後には御影がたっていた。コイツって忍の一族だったっけ?というか、キノコのように何処にでも生えてくるのは止めて欲しい。


「オーロラを見るなら誘ってほしかったですよ、本当。僕も宇宙にはそれなりに興味があるんですから」


「すまんすまん、今度はちゃんと誘うから。」


「あ、それと...さっき扉の外に不審人物がいました」


 ...............。


「は?」

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