Panic

第29話

 メンタリスト様ー!お客様の中にメンタリスト様はいませんかー?

 

 と、放送で流したい所だが、それはなんか面倒なのでやめた。


 そういえば、千寿にONE P◯ECE貸してなかったな。

 僕は電話で千寿に僕の部屋に来るよう伝える。


「さて、と」


 僕は棚から数冊漫画と資料をだす。

 この資料は僕の親父のもので、船の出る一週間ほど前に一言、持っていけとだけ言われて渡されたものだ。


 その渡された大きなファイル12冊は見事に漫画(単行本)108冊分のスペースを取りやがった。

 ファイル一冊漫画9冊分の太さだぞ?おかげで他の漫画を倉庫に入れる羽目になったじゃないかあのクソ親父。

 

 本当ならこの資料を全部倉庫に入れたい所だが、僕だって物事の優先順位くらいはわかっている。

 

 泣く泣く漫画達は倉庫にしまった。今度どこかの星に降りた時に全部倉庫から出して誰かの部屋に置かせてもらうとしよう。

 

 千寿や勲なんかは頼みやすい。黄昏は...勲と同じ部屋だった。これで少し頼みにくくなった。自分から面倒事に飛び込むなんて御免だ。

 景夜の部屋に無理やり置かせてもらうか。いや、アイツのことだ、漫画なんて置くスペースなど無い可能性が高い。

 恐らく棚は既に論説文や図鑑なんかでいっぱいだろう。


 考えただけで寒気がしてきた。よくもまぁあんな面倒くさい本を読めるな。自分で試したほうが楽だろうに。


コンコンコンコン ココン ココン


「入れー」


「大変だよ!ほんと!大変!!!」


「なんだ、どうした?」


「皆、ちょっとパニック状態になってる!!第二の地球も諦めかけてる人が多いよ!どうしよう!!」


 ...どういうことだ?


 できるだけ皆が希望を失わないように配慮はしたつもりだ。確かに、間違えたら後戻りは出来ないとかは言ったが、それ以外の情報は一切伝えていないはずだ。


 皆に希望がなければ第二の地球で生きるなんて到底無理だ。希望がなければ、進むことを諦めればその人の人生は止まってしまう。


 これでは、地球に残った人々が、彼らの努力が無駄になってしまうじゃないか...!


「どうすれば良いんだっ!!」


「...一先ず、落ち着こ?宇界クンが落ち着かないと皆も落ち着いてくれないよ??」


「.........」


「なんでああなったのかは解んないけど、皆で一緒に他の皆を落ち着かせて希望を取り戻させることはできるよ!」


「皆?」


「そう!私とか、勲クン、唯一クン、黄昏クンとか!宇界クンは独りじゃないんだから、なんとかなるよ!皆がいれば!!」


「ハ、ハハッ...どっかの漫画でありそうなセリフだな.........ここまで来たんだ、意地でも第二の地球で生き延びてやる。」


「ここまで来たって言ってもまだ土星にもついてないけどね。」


「うっ」


 そこはうん!だろ。漫画っぽいセリフ言ったんだからもう少し乗ってくれてもいいだろうに。

 だが、本当にそう思っている。宇宙空間で人類全滅なんてのは御免だ。


 僕は唯一にアナウンスで乗員全員を共用スペースへ集まるよう呼びかけてもらう。


 唯一にはコントロールルームの方ではない、THE放送サボり室の方の鍵を渡しておいた。今後もアナウンスを頼むことも多いと思うからな。


「千寿、王道を一応探しておけ。見つからなかったら別にいい」


「えっ、どうゆーこと?」


「この際、僕がキャプテンだってバレても良いっつーことだ。」


「!!じゃあ、私達も全力で頑張るから!宇界クンがそんな事言うなんて100万年に一度の奇跡だよ!」


「大袈裟おーげさ」


 僕としては王道が見つかったほうが嬉しいんだがな。いまは時間を優先したいから見つからなかったら別にいいなんて言ったが、やっぱり王道がいないと少し痛い。


 見つかってほしいんだがな、僕の勘が見つからないと告げている。


 所詮は勘だから信じるに値しないかも知れないが...


 なんだか胸騒ぎがする。


 僕の勘は......よく当たるからな






 ―――«後書き»―――

 ツイッターで宇界のイラストあげてみました!

 もしかしたら皆さんの宇界のイメージとは違うかも知れません。

 顔はTHE・手癖って感じです(笑)

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