第28話

「唯一。僕、ちょっと弟んとこ行ってくるわ」


「え、弟いるの!?チビ宇界!?」


「いや、性格似てねーから」


 昔から、僕の事は会ってもいないのに知っているくせに僕の弟の事を知らないやつが多い。

 なんだろう、この知名度の差は。僕ってそんなに目立つことなんてしていないと思うんだけどな。

 ちょっと賞をとったり、ロケット打ち上げてみたり、夏休みに宇宙へ行ったり、店たてたり、学校に大量のクーラー寄付したり、僕が全額負担して一大夏祭り開かせたり......色々やってたわ。


 でも、これらはあくまで僕の住んでいた地域の人しか知らないはずだ。あ、いや、この世には見えない脅威があるの忘れてた。


 『SNS』、これしか無いだろう。誰だよ、ツイートしたやつ。インスタもアウトじゃい


 僕は食堂を出て、長い廊下を早足でその部屋へ向かう。食堂にはいなかったから部屋か共用スペースにいるはずだ。

 だが、共用スペースに至っては僕の弟はそんなに人と関わるような人間ではないので可能性は低いだろう。


 僕は赤茶色のドアの前で立ち止まる。そこには501と書いてあるプレートがドアの真ん中に貼ってあった。


 501号室。それが僕の弟の部屋だ。

 いや、正確に言うと弟ともう一人の部屋だ。


 僕は軽くノックをしてみる。暫くすると、ゆっくりとドアが開いた。


「え、あ、どちら様でしょうか。」


 金髪に青い瞳...ハーフだろうか?中学生くらいの少年が出てきた。


「ここに景夜が居るはずなんだが...」


「あ、新世景夜くんですよね?彼なら部屋の奥に.......」


 部屋は真ん中に仕切りとして本棚が置かれており、右側は明るく、その反対側は暗かった。

 別に本棚なんか置かなくとも希望者にはちゃんと壁をつくってあげたんだけどな。かなり大雑把にやったから出来はイマイチだけど。


「何しに来た、バカ兄貴」 


「おー、相変わらず冷てーの」


「本当なら家族の縁も切りたいんだがな」


「お、奇遇だな。僕もよ」


 ご覧のとおり、僕らは仲がとても良い。あぁ、とても良いさ。家族の縁を切りたいくらいには。

 まぁ、今じゃあもう切る理由も無くなったから別にどーでも良いんだが。


「チッ...要件を言え。」


 景夜がドアの方まで歩いてくる。外見は僕と似ている。ただ、髪の色が僕は二色なのに対して景夜は一色だ。まぁ、これが普通だろう。


「おめーをいじりに来たんだよ。あ、用事があるからまたな」


「もう来んな」


 冷たいな。親父とは違う冷たさだが。少なくとも話はしてくれる。

 元気そうな顔を見れて僕は満足だ。


 今じゃあたった一人の家族だ。これからは普通に接して行きたいものだ。


「素直じゃありませんね。素直に弟の顔を見に来たと言えば良いものを」


「聞いてたのかよ。僕はそんな素直にはなれねーんだよ。知ってるだろ?」


「えぇ、知ってますよ。ようく知っています。」


 御影はなんだかんだ僕に敵意は無い...と、思う。これも一種の変った友達だ。


 だが、景夜の場合は敵意しか無い。あの目は何かを憎んでいる目だが...一体何を憎んでいるのだろうか。


 孤狐ミヤギの事はまた今度聞くとしよう。今日はそんな気分じゃなかったしな、お互い。


 この宇宙空間で揉め事はできるだけ起こしたくない。


 早期解決はしたいんだがな。メンタリストいませんかね〜

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