第27話

 僕は食堂へ行く。今度、この食堂も商店街のようにしようと思っている。

 まぁ、飲食店がほとんどになるだろうが。


 こんな宇宙空間でも楽しんでほしいからな。一番怖いのは全てに飽きてしまうこと。暇を極めるのはそれはそれで楽しいが、やりすぎると本当に精神状態が危うくなるからそれだけはできるだけ避けたい。


「どーだ、唯一。パンは出来上がってるか?」


「凄いよ、千寿さん!もう目にも留まらぬ速さで、シュバッ!ドババッ!って、一瞬で作ってしまったよ。発酵するのも速かった!もう3秒位でふっくら!もう魔法のようで―――」


「スト――――ップ!お前の興奮は解ったから座れ。発酵が3秒っていうのはよくわからないが、千寿は料理に関してはプロも顔負けだ。それは幼馴染の僕がようくわかっている。」


「惚れたかも」


「結構前から既に惚れてただろ」


 僕は目の前に置かれたシャンピニオンを一口頬張る。きのこの形をした、なんとも奇妙なこのフランスパン。

 上の平たい部分はカリッと香ばしく、丸い部分の中身はふわりとしており、コーヒーと食べても合いそうだ。いや、紅茶でも良いかもしれない。


「よし!今度は茶畑も作るぞ!」


「え、茶畑?なんで??」


「紅茶が飲みたい。ダージリンが好きだけど素人には少しキツイだろうから普通にアール・グレイでいいや。あ、イングリッシュ・ブレークファストでも良いかもしれない。あれはミルクティーに丁度良いから。いつかカモミールも植えたいな。寝る前に飲めばリラックスできるし疲労が少し回復する。」


「俺さ、お茶とか詳しくないから全然何言ってるかわかんないんだけど...知ってるの玉露くらい。」


「和!!」

 

 なんでイングリッシュ・ブレークファスト知らないで玉露知ってるんだよ。さては祖母にでも教えられたか。

 僕は日本のお茶なら宇治茶が好きなんだよな。丁度いい苦味がなんとも......って、宇宙でこんな呑気なことが言えるなんて気が緩みすぎてるか。


「なぁなぁ、新世宇界君。俺も一緒にええかなぁ?」


「ん?あぁ、別に良いぞ」


 いきなりキツネ顔が隣に立っていたから狐の妖怪でも出たかと思った。妖怪なんか信じてないけど。


「お、これむっちゃ美味いやん。紅茶なんかと合いそうやなぁ。」


「つまみ食いすんな。それ僕のな。」


 勝手に僕の皿から横取りしたのはマナーとして許せないが、一応気は合いそうだ。


「今度茶畑でも作ろうと思っている。お前にも働いてもらうから覚悟しろよ」


「おー怖っ。俺は遠慮しときますわ。」


「特に役割ねー奴は全員強制だ。」


「わわわっ、じゃあ俺は全力で喋りまくる係でどーやろか?」


「うるさいだけだろ。いらないよそんな係。」


「新世君の弟子」


「なら尚更働いてもらわないとな。」


「ごめんなさぃいいい!弟子辞めます!だから仕事増やさんといてぇええ!!」 


 会話劇かよ。

 というか、僕まだこのミヤギってやつのこと知らないんだが。苗字はどっかで聞いたことがあるはずなんだが...もしかしたらアイツなら知っているかも知れない。


 僕の、弟なら......


「唯一。僕、ちょっと弟んとこ行ってくるわ」

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