第24話

 僕は暫く船内をウロウロと歩き回る。

 かれこれ10分ほど王道を探し回っているのだが、一向に見当たらない。

 もう最悪知らないやつでも良いからとにかく体育会系連れてくるかと思ったその時、僕は狐のような目をした細い男と、王道を見つけた。


「あ、王道!やっと見つけた...」


 急に疲れが押し寄せてくる。船内をずっと歩き回るのはちーとキツイ。

 重力が弱いと言っても、ちゃんと床に埋められた磁石達は仕事をしているからな。足だけ鍛えられそうだ。


「なんだ?何かあったのか?」


 ......?なんだろう、少しいつもに比べて元気がないように感じる。

 まぁ気のせいだろう。聞くのも面倒くさいし。


「おー、ちょっと手伝って欲しい事があるんだが...誰だぁ?そいつ」


「そういえば、名前すら聞いていなかった。お前誰だ?」


「えー?酷いなぁ。さっきまであんな事話しとったんに、俺の名前も知らへんの?」


「いや、それはお前が名乗らなかったからだろう。」


「あれー、名乗ったと思うんやけどなぁ...まぁええや。俺の名前は孤狐くごミヤギ。ミヤギの漢字は嫌いだから教えへんけど、まぁヨロシク?」


 そう言ってそいつは頭を少し傾ける。その顔にはニタニタと胡散臭い表情が浮かんでいる。

 本当ムカつくな。会って間もないのに既に僕はコイツが嫌いなようだ。

 

 なんで僕の周りには変人しか寄ってこないのだろう。変人は変人を呼ぶそうだが、僕は決して変人ではない。

 

 だが、クゴ......何処かで聞いたことのある名だ。確か親父が昔、何か...

 あぁもう止め止め。親父の事考えていると気分が悪くなる。


 とにかく、僕は王道を連れて再び外へ出た。


「このペダルをこげ。以上。簡単だろ?」


「は?」


「いや、だから。このペダルに、足乗っけて、くるくる回すんだってんだ。OK? Do you understand日本語わ Japanese?かる?


I SAID DOだから! NOT UNDER 舐めんなっつ ESTIMATE ME!!ってんだろが!!


「いや、これ舐めるとかそーゆー話じゃねーだろ。アホか。それにしても自然に英語で返してくるとか、さては帰国子女か。」


「......」


 黙ったってことは図星か?目も斜め下を向いているから間違いないだろう。

 口も少々尖っているしな。


「まぁ、そんなこたぁどーでも良い。そんなに顔を曇らせたってこたぁ何かあんだろ?僕も人様の過去いじくり回すほど悪趣味じゃねーよ。安心しな」


「?喋り方が先程より荒くなっていないか?」


 その辺りは放っておいて欲しい。別にやりたくてこんな面倒くさいことしているんじゃないんだ。

 というか、無自覚だから面倒くさいも何もないが。まぁそれはどうでも良い。


「オメーがオセーからだよ。早くしろ!あいつ等のことだ。僕が追ってこないのを良いことに更に調子こいて反対側まで行きかねない!!」


「マジカヨ」


「マヂダヨ」 


「?さっきヂになっていなかったか?チに点々―――」


「そんなこたぁどーでも良い!早くしろ!」


「なんで俺がお前に命令されなきゃ―――」


「あ゛?なんか言ったか?」


「......すいません。」


 そんなこんなで、宇界は無事、マンパワーをゲット。そして、王道は泣く泣くソリをこがされたのであった。

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