第20話

「エウロパ歩いてみたい奴は手ぇ挙げろ!」


 ザッと、一斉に手が挙がる。

 正直、これ程とは思わなかったので驚いた、と共に嬉しい。


「おい、代理。」


「その代理ってのは辞めろ。」


「◯-3室にある宇宙着、『全部』持ってこい。お前なら出来るだろ?」


「あ、あったりまえだ!」


 そう言って王道は◯-3室へ向かう。これぞ心理を使った人の操り方。

 自信のありまくる奴ほど効果は大きい。

 だから、王道なんかは使いやすくて実に便利だ。

 常に四次元ポケ◯トにいれて持ち歩いていたい、ってのは気持ち悪いか。


 だが、それほど便利なのだ。


 しばらくして、王道がゴゴゴゴゴと言う音と共に戻ってきた。

 思ったよりも早かったので、そこは普通に褒めてやろう。


「どっ、どうだ!」


「あー、お疲れさん。唯一、千寿、勲、黄昏。希望者はそこに集まってもらったから宇宙着を配っていってくれ。」


「はーいっ!」「うん」「おう!」「任せろ!この俺にかかればどんな事でも一瞬で終わる!なぜなら俺には邪悪なる助っ人、カルシファーがいるからな!」


 ハウルの◯く城!!勝手に連れてくるな!暖炉に返せよ!

 それに、カルシファーは邪悪じゃない!


「そんな邪悪な助っ人の居るやつに仕事を任せることは出来ない。」


「な!?じゃ、じゃあ神聖なる助っ人でどうだ!」


「お前悪の使徒じゃなかったのかよ。」


「ぐああああああ!」


 まったく、この僕に馬鹿が感染ったらどうすんだよ。


 黄昏はスルーで宇宙着配布作業だ。


 昔の宇宙着はでかくてかなり動きにくかったようだが、最近では新体操が出来る域で動きやすい。

 たしか、2020年辺りだったか?NASAが動きやすい宇宙服の制作に成功していた。

 だが、やっぱりまだ動きがいまいちで、ぎこちない感じだった。

 で、最近になって...というか、祖父の代の時代でより動きやすい宇宙服が開発された。

 開発の第一人者は僕の祖母らしい。なんでも祖父を上回るほどの天才だったとか。


 だが、僕の記憶の中にはアイスクリームやらお菓子やらなんでも買ってくれる素晴らしい人、というイメージしかない。


 皮肉なものだ。母の事はぼんやりとしか覚えてやいないのに、祖父母の事はハッキリとおぼえているなんて。


「宇界ク〜ン!子供用ってある〜?」


「あぁ、そこら辺にあるだろうから取っとけ」


「はいは〜い!」


「宇界!この服の着せ方がわからんぞ!!」


「手ぇ通すとこに手ぇ通して足通すとこに足通すんだよ」


「なるほど!」


「説明になってないから俺が勲にテレパシーで着せ方を教えてやったんだ!!」


 黄昏復活か。こいつの扱い方には少し工夫がいるから面倒くさい。


「黄昏。緊急事態だ。他の誰にも言うなよ?一番早く、多くの宇宙服を配った者だけ光る球体を手に入れることができる。どう―――」


「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!『神の涙』よ!待ってろよ!!!!!」


 神の涙?...オー、オーケー、オーケー、黄昏レングエッジ。意味)厨ニワードか。


「宇界君、」


 今度は何だ。


「えーっと、手伝いたいって人が...」

 

「チーっす!おひさ〜!なんかさー、アタシの愛しのウカイがさ〜ぁ?色々やってるって聞いたから手伝いに来たった〜!」


「来たった〜!、じゃねーよ!なんでいんだよ!」


「え〜?だって走り回ってみたいじゃん?エパロパ。」


「エウロパだ。エ・ウ・ロ・パ!」


 相変わらずの阿呆さに飽き飽きする。


「......宇界君。なんで俺の後ろに...?」


「そこにいる輝羅々に殴りかかられそうで怖い。殴るならどうぞこいつを殴ってください。」


「友達を差し出すの!?」


 唯一は何をそんなに驚いてるんだ。


「面倒事から逃れるためなら!」


「性格悪っ!」


「フッ、今頃気が付いたんですか?唯一とやら。天才科学者の宇界サマは性格がとことん悪いんですよ。本当、今頃になって気が付くなんて、阿呆ですか。」


 ...メンバー大集合ってことで打ち上げでもするか?なんだよこのメンツ。最悪じゃないか。

 毒舌、ギャル、厨二病に、常時ハイテンション女子に、応援団長に、人気Utuberだぞ??

 疲れる。


「そういえば、お前らも降りるのか?」


「もち!」「当然でしょう?」


「なら、はよ着ろ。皆準備できたら僕について来い!外には寒〜い氷の世界が広がってるぞ!」


「「「おう!」」」

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