出立
第3話
前回、第2話の簡単なまとめ:
地球温暖化が進んでヤバいことになって人類滅亡寸前!!
若い奴らに第二の地球探してもらえば大丈夫っしょ、とお偉いさんのジジイ共。
ちょっと『スペース・デブリ』や宇界の父の発明品の説明。
宇界が『エルピス3号』のキャプテンだと判明。
「うわー!浮いた浮いた!お母さんたちが棒人間みたーい!」
「本当だ!おーい!親父ー!」
「フフフフフ......、みたか!俺の右手に宿る封印されし闇の力を使えばこの船を浮かばすことなど容易いのだ!」
「.........なんで増えてんだよ!」
宇界は勲と千寿がわいわいと騒いでいる間も黙っていた。なんでそんなにハイテンションなんだ、と色々と言いたいことはあったが我慢したのだ。
もしかしたら、こいつらは騒ぐことで寂しさを紛らわしているのではないか、と。
だが、そこにもう一人、もっと騒がしい奴が増えたことで爆発してしまった。
「お前なんでこっちにいるんだ!あっちだろ、お前の席!」
「別にいいだろう!俺の左手に宿るルシファーが俺をここへと導いたのだ!」
「この間は右足にスフィンクスとか言ってたじゃねーか!」
「ああ!ちなみに左足にネクロマンサー、右手にサタン、右目に堕天使、そして左目に闇の精霊が宿っている!」
「キショッ...ゴチャゴチャしすぎだろテメー、
両手・両足にボロボロの包帯を巻き付けた少年―――黄金時黄昏は高校に入ってもなお、拗らせているかなり重症な厨二病患者である。
正直、こいつは文明を起こして一段落ついた所で登場してほしかったと思っている。
黄昏の能力的にも、船内では彼はただの無能だ。
この四人・千寿、勲、黄昏、宇界は小学生からの友達だ。宇界の覚えている限り、黄昏は元からかなり格好をつける方だったが、厨二病になるまで悪化したのがいつからかは覚えていない。が、面倒臭いのは確かだ。
「俺は厨二病などではない!他の雑魚どもと一緒にするな!」
「あ〜あ、また始まっちゃったよー。」
千寿は軽くため息をつく。
「俺の名はトワイライト!正義の味方だ!」
黄昏は戦隊モノのヒーローのようなことを叫ぶと、座席の上に立ち、腕の包帯をほどき始めた。
「正義の味方ってことは正義じゃねーじゃんか」
「あ゛」
宇界の一言で先程まで散々騒いでいたのが嘘のように、まるで石像のように固まる。
「フッフッフ...........この俺が悪だとよく見破ったな!俺は実は悪の使徒だ!さぁ!俺と戦うが良い!ミカエルよ!」
もうツッコむまいと、宇界が心に決めた瞬間であった。
『間もなく、外気圏へ突入いたします。』
アナウンスが流れる。これらは全てAIだ。勿論、日本語以外に英語、中国語、スペイン語、フランス語などが流れる。
喋れる人が限られてくるような、言わば少しマイナーな言語は共用スペースの場合は特大スクリーンに映し出され、自室の場合はテレビに映し出される。
「と、言うことは今は熱圏辺りか。」
「ねつけん?何だそりゃ?」
暫くさきイカを食べていて静かだった勲がそれを口に加えながら宇界に問う。
「あぁ、地球に大気ってのがあるのは知ってっか?」
「大器?知らないな。聞いたことはあるけども......寝ていた気がする。」
「態奇か!それはかつて世界を滅ぼ―――――」
「だろうな。大気ってのは簡単に言うと地球の周りの空気だ。」
そこそこ頭の良い千寿はウンウンと頷いているが、居眠りと厨二病のお馬鹿二人組は目をパチパチとしている。
黄昏の方は無視されたので少々拗ねているようだが、それは放置すれば勝手にもとに戻るということをよく理解しているので、宇界は彼を放っておく。
(あー、駄目か。これでも分からんか。まぁ、コイツ等ならしゃーないか。)
「まぁ、とにかくお前らは空気だと思っていれば十分だ。大気は大きく分けて4つの圏に分けることができる。僕等がいた地上に一番近いのが対流圏。大体6〜20kmの、飛行機とかがとんでるところな。」
宇界はせっせとホワイトボードとペンを出し、図を書き始める。
「そんで、その次が成層圏。オゾン層があるところって言ったら分かりやすいか?20〜50km辺りだったはずだ。」
そう言って図の成層圏のところをカラーマーカーで塗る。
「その次が中間圏。流星とかがこの辺りらしいが詳しくは知らん。大体85kmまでだったはず。それで最後の4つ目が―――」
「熱園とかいうやつだろう!」
「惜しい、熱圏な。これはスペースシャトルはだいたいこの辺りを飛んでいる。後は、オ――――」
「はいはいはい!オーロラでしょ!見たことないけど見てみたい!」
その千寿の相変わらずのハイテンションぶりに宇界は苦笑する。
「このクソ暑くなった地球じゃあ無理だろうよ。ろくに外を出歩けもしないんだから。」
「えー、そんなぁ〜!じゃ、じゃあさ!第二の地球で.....」
「僕等は大体の目安がついているってだけで別に必ずしもそれらの星が人間の住める環境だと分かったわけじゃねーんだ。見つかるまでに何百年かかるか.........」
「何!?何百だと!?俺ら全員死んでいるじゃないか!」
「ったりめーだろーが。でも地球が壊滅状態だからあのお偉いオッサン共はこんな面倒い無理ゲー押し付けてきたんだろうが。」
宇界はもう一度窓の外を見つめる。
(緑と青の星と呼ばれていたらしいが、今じゃあ茶色?と青の星じゃねーか。)
「あっ!みてみて!すっごく暗くなってきたよ!」
「空は青いから宇宙は濃い青だな!」
「有無、一理ある!流石だな!デヴィルよ!」
「いや、何でそうなるんだよ!いや、気持ちは分からなくもないけどよ、勲をデヴィルは流石に無いだろ!」
それから暫くワイワイと騒いでいると、黄昏がデヴィルの件以来、静かな事に気が付く。全員で黄昏をさがすと、壁になんやら魔法陣らしきものを蛍光塗料で書いているのを目撃してしまったのだが、その話はまた今度するとしよう。
黄昏がいると論理的に話をすすめることが出来ないので困ったものだ。
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