魂の運び手

春風月葉

魂の運び手

 あの花も、この花も、全ての花を愛しましょう。花の外見なんて私は気にしないわ。欲しいのは一つだけ。今宵も私は花々に誘われる。

 甘い甘い夜の味、罪悪感なんてこれっぽっちもありはしないわ。対価には優しい夢をあげましょう。短い夜が終わるまで、あなたの隣を埋めましょう。馬鹿な花ほど愛おしい。

 罪も、孤独も、後悔も、私が食べてあげましょう。全てを私に寄越しなさい。愚かなあなたの魂を私が運んであげましょう。

 濡れた翅を広げ、夜の空に向かって蝶は飛ぶ。中身のない花の青白い頬を月光が優しく照らす。中身を失った花は色をも失い枯れていく。そして、長くて短い命を終える。

 夜が明ける。人は枯れた花に涙を流す。もう再び咲くことはないとわかっているはずなのに。全てを知る運び手は何も知らぬ顔をしてひらりひらりと飛んでいた。

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魂の運び手 春風月葉 @HarukazeTsukiha

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