第2話 ブティック

 202x年。世の中の至る所に防犯カメラが設置され、超監視社会になっていた。

 悪い奴はいるもので、撮影された映像を違法コピーし、その映像中の会話をAIを使って本音に翻訳した上で拡散するという犯罪が氾濫していた。



定員:

「いらっしゃいませー」

(冷やかしかなあー)


客:

「……」

(自由に見せてよね)


定員:

「そちら昨日入荷したんですけど、もうその一点しか残ってないんですよー」

(ほんと、可愛いやつだから、私が欲しいんだけどねえ……)


客:

「そうなんですか?……」

(全然、可愛くねえよ)


店員:

「良かったら合わせてみてくださーい」

(買えよ。いや、買うな!)


客:

「はい……」

(だから可愛くねって!)


店員:

「……」

(戻しやがった……。興味ねえなら触んな! 直さなきゃなんねえだろ)


客:

「このワンピース、9号までですか?」

(さりげなく、大きいサイズも並べとけって!)


店員:

「ああ、ワンサイズ大きいのが昨日出てしまいまして……。でも、サイズよりゆったり目に作ってありますので」

(無理かな)


客:

「試着してもいいですか?」

(糞。ちょっと可愛いなと思ったらサイズがえのかよ!)


店員:

「はい。どうぞこちらへ」

(チャレンジャーだな。車幅感覚、えのかよ?)


客:

「うーん……」

(チャックが閉まらねえ)


店員:

「いかがですか?」

(ダメだろな)


客:

「やっぱりサイズがちょっと……」

(言わすな!)


店員:

「ワンサイズ大きいのをお取り寄せ致しましょうか?」

(11号な)


客:

「いいえ、結構です」

(また来て、11号試着しろ、てか。面倒くせえわ!)


-------------------


 やがて、加工された映像がネット上に放たれ、あっと言う間に拡散した。


「糞! この間の店員、やっぱ、あたいの事、デブだと思っていやがった」


「そんな事ありません。いつもありがとうございます」

(自分で分かるだろ!)


「このウィルス、切りがないな」


ええ……」


「どこの店員も大差ないじゃないの?」


「デブだな」


「ですよね?」



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嗚呼! 炎上 ~ 嘘と闇とだだ漏れと ロックウェル・イワイ @waragei

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