密着(後半加筆)


新入部員となった小夜は、毎日文芸部に参加するわけではない。


彼女は俺達よりも友達が多い。その付き合いもある。ま、ストレスになることもあるが、周りから可愛がられているのは事実で、今の友達との縁を切るのはどうなの? と俺達と話し合った結果、週一くらいでコスプレ撮影の練習をすることになった。


ちなみに優依にコスプレ撮影を提案した時、少し悩む表情をした。


どうやら、夏のイベントで優依はコスプレをしていても、コスプレ撮影が出来る場所には行くつもりがなかったようだ。


けど、小夜の猫の写真や盗撮写真を見て、俺も優依も思った。素人にしては、やたら上手だ。


盗撮写真のモノによっては、かなりグッとくる出来映え。


盗撮のことを隠すにしても、今後の小夜がまたストレスを溜めて盗撮を行い、見つかると俺達が黙っていたことが露見するかもしれない。それは困るので、ストレス解消と俺達の実益をかねてコスプレ撮影を提案したのだが、最初の一回目は大人しいデザインのアニキャラの学生制服、デジカメは俺の親のを借りた。


撮影時間は三十分と短かったが、お互いに満足する結果だった。……後半はフェチっぽい感じになったけど。



「本当に出来が良いな」


文芸部の部室のソファで、俺は優依と並んで座り、コスプレ撮影で撮った画像を優依と二人で確認する。


「うん、ビックリ」

「可愛い系ではなく綺麗系だな」


俺の言葉を聞いて、優依は恥ずかしいと少し怒ったように俺を見る。


手元のデジカメの画像は、うっすらと化粧をして、赤いブレザーのミニスカートの学生服を着て、窓際で椅子に座り本を読む優依はとても綺麗だ。


黒のロングヘアーのキャラを選らんだけどかなり合っている。


「この左斜め上からのアングル良いな」

「うん」

「後、三つ後ろのソファで、気だるげに横になってるのも」


俺は優依にグイッと身体を密着させる。

優依も俺の変化に気づいたのか、ぐいっと控えめに身体を密着させてきてくれた。


そして、腕を優依の腰に回して、


「ずっと座りっぱなしも辛いから、少し横にならない?」

「う、うん」


かなり恥ずかしそうにする優依。


俺は優依に腕をまわしたまま、ソファから立ち上がり、


「優依、ごめん。今、俺は両手が塞がってるから、床に敷くシートは優依が敷いてくれるか」

「え?」


驚く優依におれはニッコリと笑顔を返す。


「ダメ?」

「…………い、いいよ」


優依はブレザーを脱いで、俺と共にシートが置かれている部室の端へ。


そして、シートをバサリと広げて、床にしくとチラッとこちらを見た。俺は自分のブレザーを脱いで折り畳み、シートで横になった時に頭がくる場所には置き、優依を先にシートの上に座らせる。


俺は優依の後ろにまわり、優依の背中から優依を抱き締めた。


そして、そのままゆっくりと優依と共に横になり、自分のブレザーの枕に、優依は俺の腕枕で首を痛めないようにする。


「いい匂い」

「体育があったでしょう」

「それでも、いい匂いだ」

「変態ですね」


俺からデジカメを奪い取る優依。

両手でコスプレ写真を確認する。


「夏のイベント楽しみだな」

「うん」

「けどこのままだとイベント参加は怖いな」

「何故?」


俺の言葉に首を傾げる優依。衣装や化粧。立ち振舞いは初心者にしては大丈夫だと俺も思っていた。


でも、


「前回の一番の失敗は優依が意外とパンチラに気づかなかったことだな」

「え?」


デジカメを操作して、優依のコスプレのパンチラ画像(ちょっとだけ見えてる)を見せると優依は固まった。


「け、消してっ」


慌てて後ろを向く優依に、俺はすぐに答えた。


「いいよ」

「……いいの?」

「うん、けど条件がある」

「条件……?」


怪訝な表情をする優依。そして、直ぐにゴミを見る目になる。俺が言う条件が何なのか、考えたのだろう。


ちょっとショックだけど、仕方がないな。


「うん、あのさ」

「うん」

「俺のこと好きって、目を見て言って」

「え……?」


意外な言葉だったのか、固まる優依。


「駄目か?」

「…………」


優依は少し迷うように、目を泳がせて身体の向きを俺の方に向けた。


「すー……、はー……」


優依は深呼吸をして、俺を見つめる。

普段は俯いていることが多いから、分かりにくいかもしれないが、優依はぱっちりとした綺麗な眼をしている。


「睦月さん」

「うん」

「貴方が好きです」

「ありがーーおっと」


優依はそう言うと直ぐに俺を顔を自分の胸に押し付けるように抱き締める。


「恥ずかしい?」

「……ん」

「可愛いなぁ」


俺がそう言うと優依は俺の身体に両腕を回してしっかりと抱き締めてきた。


「柔らかい」


そう言いながらゆっくりと鼻で呼吸する。

そうすることで、優依の匂いがはっきりと感じられる。


「……変態」


俺のしていることが分かるので優依は恥ずかしそうにしながらも、俺を罵倒する。


でも、その言葉と同時に優依は俺を強く抱き締める。


すると素敵な二つのお山が俺の身体に押し付けられる訳だ。


とてもふわふわして、柔らかい上に弾力もある。


ああ、やはり。


「俺は君(のおっぱい)が好きだ」


俺が優依の胸にから顔をだし、身体を動かして、優依の耳元で改めてそう囁くと優依はくすぐったそうに身体を捩る。


ああ、可愛い……。


「俺からも抱き締めていい?」


優依は俺の胸に自分の額を押し付けるように頷いた。


暖かい、優依の体温が全身に伝わってくる。

そう思っていると、


「睦月さん」

「ん?」

「汗の匂いがします」


やべっ!? 薬用の使い捨て汗ふきハンドタオル使ったけど、足りなかったか!?


慌てて謝ろうとすると、優依は顔を上げてこう言った。


「私、睦月さんの汗の匂い。最近好きになってきました」


頬を紅くして、微笑む優依はとても可愛くて、俺は堪らず右手を優依の頬に伸ばしていた。


「優依、本当にか可愛いよ」


じっと見詰める俺、優依も俺が何をしたいのか分かったのだろう。少し戸惑う雰囲気だったけど、


「む、睦月さんから……」

「分かった、俺からだ」


優依はゆっくりと息を吐き、目を閉じてから。微かに震えながら目を伏せる。俺に優依の顔を少し近づけ。


「優依、好きだ」


微かに頷く優依にの唇に俺の唇を重ねた。


「「んっ」」


この日、俺は初めて優依とキスをした。

唇が触れ合い、お互いにぎこちないキスだった。



「ファーストキス?」

「うん、睦月さんは?」

「実は俺もだ」


キスは十秒くらいだろうか。

途中、お互いに息苦しくて、思わず唇が微かに開いてしまい、少しだけ二人の唇が濡れてしまった。


「優依」

「ん?」

「もっとキスしたい」

「…………」


一度してしまえば、後は転がっていくだけ。


この後、汗だくになり、お互いに上着をさらに一枚脱ぐために、身体を離したときには、唇だけではなく、口の中までお互いにベタベタになってしまった。


▽▲▽▲▽▲


結局、初めてキスは優依の読んでるピュアな少女漫画のような感じではなく。途中からエロ漫画みたいなキスになってしまった。


まあ、今まで頬とか首筋とかにしかキスをしていなかったから、溜まっていたものが爆発したのだろう。


あのまま初体験にならなかったのは、単純に俺の鉄の理性、ではなく。


夜のうちに沢山発散していていたのと、優依がキスで惚けたからだ。


キスをお互いにしながら、途中からお互いを強く抱き締め合い。体液を交換。気が付けば優依は力が抜けたのかぼんやりと俺を見るだけだった。


流石にそんな状態の優依を押し倒すのは気が引けた。それに下手なことをすれば優依に嫌われる。変態な俺を何だかんだで受け入れてくれる心の広い女の子だ。


まあ、優依自身もセクシャルなことが好きで、興味津々ではあるみたいだが。



しばらくして、優依が復活。


気まずそうにしていたが、それが長引くと嫌なので、俺は優依に「可愛かった」とだけ言って、もう一度キスをしようとしたら、優依もしたいと思ってくれたのか、たどたどしいけど、積極的ではあるけど、少女漫画のような軽い触れ合うキスをさせてくれた。


俺も濃厚なキスをするつもりは無かったのだが、お互いにしたいキスが分かったのか、思わず唇が離れたあと目があって小さく笑いあった。


それから、しばらく優依と抱き合っていたが、流石にお互いが汗をかいたので、汗を拭くために 身体を離した。


俺は汗をかきやすいので、フェイスタオルをいくつから持ち歩いている。


「ほら、予備。汗拭いた方が良い」

「あ、うん。ありがとう」


そう言って、資料室へ移動する優依。

あんなにキスしたのに、汗を拭く姿を見れるのは恥ずかしいようだ。


実は優依も汗をかきやすい。抱き締めるとき脇の下辺りが少し湿っていたのは気づいていた。まあ、指摘はしないが。


それに女子は通気性のよいとは言っても、スクールセーターで透けブラを防止している。


汗をかかない方が難しい。


少しして、汗を拭き終えた優依が戻ってきた。


「タオル、洗って返すね」

「あ、いいよ気にしなくて」

「ううん、流石に」


少し申し訳なさそうな優依に俺はにこやかに答えた。


「優依の汗なら大歓迎だから」

「ーーやっぱ絶対に持って帰る」


バッと俺から距離を取って、ちょっと怯えた表情をする優依。


え、なんで?!


「ゆ、優依」


俺が一歩近づくと優依も一歩後ろに下がった。


なんで!?


「ゆ、優依?」

「今の睦月さんの笑顔、生理的に無理」


俺は膝から力が抜けて、カクンとその場に両膝を着き、そのまま前のめりにた折れ込んだ。


す、すごいショック。


その後、傷付いた俺が可愛いそうに見えたのか、優依は「ごめんなさい」と謝ってくれたが、謝らなくていいよ。と、俺も謝った。


帰りは少し遠回りしながら、他の生徒に見られないように二人で帰った。


うん、今日は良い日だった。





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