ふわふわちゃん



「ふわふわちゃん?」

「うん、私がそう言った訳じゃなくて、周りがそう言っていたの」


放課後、俺は部室で優依と二人並んでソファに座りながら、スマホゲーで協力プレイをしながら、ふと昼休みの時は気にしなかった、髪がふわふわなペッタンコの美少女のことをなにんとなく優依に聞いたのだが。


「富澤小夜(とみざわ さや)って子よ。何時もニコニコしていて、正直気持ち悪い子」

「ニコニコが、気持ち悪い?」

「うん、クラスの男女問わず、可愛がられているんだけれど……」

「けど?」

「嘘臭いの、笑ってる姿が。周りは可愛いらしいけど、私は嫌。親戚の娘を思い出す」


付き合う前に、一度だけ聞いた親戚の女の子か。猫被りが上手で、本性を知っている優依を警戒しているらしい。


ちょっかいかけてこないのは、優依のアグレッシブさを知っているからだろう。


スタンガンとかチカン撃退スプレーとか。


「だから私は彼女に近づかないようにしてる。クラスが違うから問題ないけど」

「ふーん、なるほどね」


まあ、俺には関係ないか、あの子はペッタンコだし。


と思っていたのだが。





★☆★☆



翌日の朝、俺は優依とイチャコラする為に普段よりも早くに学校に登校して、部室に色々と荷物を置いた。


これで、もっと優依とイチャコラ出来るな。とウキウキしながら教室に戻る途中。階段をかけ降りてきたふわふわちゃん、こと富沢小夜と階段の踊場で正面衝突した。


俺は下から階段を登っていたうえに男なので踏みとどまったが、小柄な富沢は思い切り尻もちを着いていた。


「ああっ、すまん! 大丈夫か!?」


富沢は何か急いでいるようで、一度だけ俺を睨み付けると、「どこみてるの?」と少し怒りなごら言って、彼女はその場を急いで後にした。


俺も「すまんな」とだけ富沢に向かって言い、直ぐにクラスに向かおうとすると、床に白い親指くらいのケースが落ちていていることに気がついた。


俺はその白いケースをカチリと蓋を開けると、中身はスマホなどに使うmicroSDカードだった。


「……富沢のか?」


確かに一番可能性があるな。でも、と考えて違うかもしれない。

俺は何となく、このケースの中身が気になった。

こういう時の直感は無視しない方がいい。

過去にこういうのを無視して後悔したことが何度かある。


「中身確認するか?」


富沢はもう何処かへ行ってしまった。

探すの面倒だし、何か本人の物だと断定出来る画像があるかもしれない。


俺は教室に移動し、microSDカードをスマホにセット。やはり最後まで悩んだが、好奇心に俺は負けてmicroSDカードの中身を見た。


富沢の物ではない場合、持ち主の画像か文章データが入ってるかもしれない。


「ん?」


microSDカードには、野良猫の画像が沢山あった。持ち主の物に繋がりそうなものはない。


だが、新しいフォルダが何故か多い。


何か嫌な予感がしたので、俺は片っ端からフォルダを開けてみていくと、殆どが空のフォルダだった。


何かおかしいと感じて、俺はフォルダの中にある新しいフォルダを片っ端から開いていくと。


「……ポエムとかが出て来てくれれば良かったんだけどな!」


誰も居ない教室で、俺の声は虚しく消えた。


microSDカードの中には、どう見てもウチの学校の女子生徒のパンチラ、パンモロ。更衣室での着替えをしている画像が大量に入っていた。


これ、盗撮画像だよな。


「面倒な……」


さて、これからどうするか? まず、これの所有者は誰か? 調べるのは簡単だ。


まず指紋。それと、詳しくはないけど。警察ならmicroSDカードからも情報が手に入る。


このmicroSDカードが入っていたケースと本体を警察に渡せば直ぐに調べてくれるだろう。


けれども、だ。


「警察も盗撮画像を購入した奴等のケースと本体は手に入れてるよな?」


それで犯人が捕まっていないとなると、もしかして、犯人の指紋が押収した証拠には付いてない? なら、これを警察に渡せば犯人を追い詰められる。かもしれない。


それにケースとmicroSDカードに俺が触っている。もし、このケースとmicroSDカードに犯人もしくは持ち主の可能性がある富沢の指紋、犯人と思われる指紋がなかったら?


……犯人扱いはないだろうけど、面倒なことになるかもしれない。



「……良し」


俺は即座にスマホからmicroSDカードを取り出して、ケースにmicroSDカードを入れると、


「まずは富沢を探すかな」


俺はmicroSDカードが入ったケースを持って、持ち主の可能性が一番高い富沢を探しに行くことにした。


まずは、様子見だな。


私の物だと言えば、事情を聞く。違うなら富沢には落とし物だから、先生に預けるとでも言って、このまま警察に届ければいい。


盗撮犯が男なら即座に警察に連絡したかもしれないが。


女の子だしな、仮に犯人なら事情くらい聞いてみたい。



俺はケースを胸ポケットにいれて、教室を後にした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る