放課後。



「やっと見つけた」

「え……?!」


富澤を探しに向かったのだが、運悪くすれ違ったためか、俺はなかなか富澤と出会えず、富富澤と話が出来たのは放課後だった。


そして、富澤のクラスへ近づくと慌てた様子の富澤がクラスから出てきてそのまま、階段を降りていった。


少し、ストーカーのような気分になったが、美少女に話しかけるモブ男子なので、周りを気にしながら、話しかけられるタイミングを探す。


そして、俺は今朝富澤とぶつかった階段の踊場で、富澤に声をかける。


俺に声をかけられて、小柄な身体をビクリと震わせてこちらを振りかえった。


やはり、富澤はかなり可愛い。妹とか小動物系だな。


「あ、あの、な、何か」

「これ、今朝ぶつかった時に落とさなかった?」


差し出されたケースを見せると、富澤の表情は怯えているように見えた。


うーん、これ持ち主は確定かな?


「え、あ、あの」

「違う?」


俺の言葉に目が游ぐ富澤。

少し必死に考えるような雰囲気だったけど、「ち、違う」とだけ言った。


「そっか、なら落とし物として届けとくか」


俺はそう言って、その場から去る。


富澤は微かに震えていた。


俺は一階の下駄箱の廊下の前に置いてある、落とし物ボックスにケースを置いた。


で、少し離れて様子を見る。


それから、五分ほどがたった。

放課後になったばかりなので、まだ生徒たちの行き来が多い。ジャージに着替えて部活に向かう者や駄弁る者、真っ直ぐ帰る者。


スマホを片手に落とし物ボックスを眺めながら、時折知り合いにまたな的な挨拶を交わして更に時間が経過した。


すっかり人が居なくなり、俺も息を殺して落とし物ボックスを観察していると、


「来たか」


廊下の角に隠れながら、落とし物ボックスに近づいてくる女子生徒。


まあ、富澤なんどけど。


周りを気にしながら、手早く落とし物ボックスに手を伸ばし、microSDカードが入ったケースを取り出すと素早く、自分の制服のポケットにいれた。俺はあえて足音をたてながら富沢に近づく。


すると足音に気づいた富澤がこちらを見て、心底驚いた表情をしながら、その場から逃げようとしたので、俺は自分のスマホを掲げながら言った。


「ケースの中のmicroSDは俺のと入れ替えてあるぞ」


俺の言葉に富澤は反射的に自分の制服のポケットに手を伸ばした。


下手に富澤が撮った可能性の盗撮画像のmicroSDなんて物をスマホに入れるなんて、仮に教師にでも見つかれば、確実に誤解される。


「あ、あのねっ」


小動物のように震え、涙目の富澤に俺は言った。


「警察か、教師か……それとも、事情を説明するか、好きなのを選べ」


俺の言葉に数秒の間があった。富澤は嗚咽を漏らしながら、「さ、最後ので」とどうにか告げたので、俺は富澤の手を握って文芸部の部室へ向かった。


その途中、なにやらブツブツ言っていたが、この状況を端から見たら、誤解されるので俺は足早に移動した。


優依が待つ文芸部の部室へ。



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