キス




ーー翌日 放課後の文芸部の部室



付き合い始めて、いつ恋人とキスするか。

人や状況にもよるだろうが、最初のデートや付き合って一ヶ月ほど経ってからと聞くことが多い。まあ、正確な数字を知っている訳ではないが。


俺と優依は唇でのキスはしたことがない。

と言うのも、付き合い始めて比較的早い段階で、俺と優依はボディタッチを多かったので、寄り添いあって、イチャイチャしていたら、気がついたらキスなどの学生らしい過程の順番をすっ飛ばしていた。


もちろん、何度かキスをする雰囲気にはなったが、優依の方がボディタッチよりもキスの方が恥ずかしかったらしく、キスは頬が殆どだ。


「えーっと、このペットボトルの飲み物は」

「……半分こ」

「お、おう」



文芸部の部室に入ると、少し緊張して感じの優依がソファに座っていた。


そして、俺の方をチラリとみて、手にしていた紅茶のペットボトル飲料を飲んで、


「ん……」


と俺に自分が飲んだペットボトル飲料を差し出してきたのだった。


「……」


俺は横目で俺を見つめる優依から、ペットボトルを受け取り、改めて優依を見ると顔を赤くしていた。


ボディタッチというか、スキンシップに慣れてしまったが、こう言うのは恥ずかしい。


俺もかなりドキドキしてる。


じっと優依に見詰められながら、俺は優依から受け取ったペットボトルを口に運び、


「甘い、けど……」

「…………っ」


優依が息を飲む音が聞こえた。


「優依の味もした」




この後、顔を真っ赤にした優依に何度も叩かれてしまったが、紅茶は交互に飲んで全部飲み干した。


今日の優依はずっと顔を赤くして、普段以上に無口だった。


俺が「また、する?」と聞くと、「……暫く無理」と言われてしまった。


優依とのキスは、まだまだ先になりそうだ。





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