彼氏なので

ーー帰宅後 睦月の自室 ベッドの上


ベッドの上で仰向けに寝転び、ぼんやりと天井を眺めながら、優依と付き合えた理由を振り替える。


ハッキリ言えば、優依と付き合えたのは、ダイスの良い目が連続で出たお陰だと思う。


まあ、運だけではなく、他にも理由はある。優依が俺と同じ陰キャ系だったので、俺は優依に配慮してクラスメイト達には目立たないようにコミュニケーションを取ったのも良かったらしい。


もし、教室とかで優依に話しかけていればし、それを見たクラスメイト達に茶化されて、恥ずかしがった優依から俺は距離を取られた可能性がある。


優依と俺は、お互いに喋るのが苦手だ。

だから、お互いに相手の話にペースを合わせて話をした。


最初は挨拶だけ、ぎこちない会話。


暫くして、趣味の話を出来るようになった。


お互いに人に飢えていたこと、話す時は人気のない文芸部の部室で二人きり、趣味が似ていたので、良い雰囲気になることが多かった。


仮に優依がオタクではなく重度の腐女子なら、付き合えたかどうか分からなかった。ソフトなモノなら付いていけるかもしれないが……。


俺の普段の態度で、優依も俺の気持ちに気付いたらしい。


出会って少しして、優依も初めての好意を向けられて、恋愛に戸惑ったのか、少女漫画を読み始めた。


優依のスクールバックから普段は読まない筈の少女漫画が見えて、優依が軽いパニックになり、お互いに余計に意識することになった。


で、大分仲良くなった時に、文芸部の古い三人は座れるソファ、気が付けば俺と優依二人で座るようになり、俺が勇気を出して距離を詰めたら、優依も近寄ってくれて、嬉しくて思わず、俺は優依を抱き締めていた。


そこから、更に距離が近くなり、先日俺が好きだと告げて、優依は「はい」と小さな声で答えてくれた。


奇跡が重なった結果でもある。


俺と優依が付き合っていること相変わらず誰にも言っていない。


言いふらすことではないしな。

茶化されて優依との関係にヒビが入るのも嫌だ。


「しかし、イベントか」


サブカルチャー・フェスティバル。

日本で初めて、漫画やアニメなどのディープなマニアなモノを纏めたイベントだ。


企業や同人サークルなどが集まるオタクの祭典なのだが。


「優依を連れていくのはなぁ」


体力のない優依をあの戦場に連れていくのはなぁ。


けど、今までは一人で勇気が出なかった。でも、俺がいるから、やってみたい。と優依の気持ちを考えるとな。


「ま、彼氏として頑張るかな」





ーー翌日の放課後 文芸部の部室



「イベントでコスプレもしてみたい」

「それは駄目」


可愛い彼女のコスプレ姿は彼氏だけのモノです。



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