雪を溶く熱

薮坂

一人



 ──雪が降っていた。


 深夜、国道沿いの歩道。シャーベットみたいなベタ雪が、アスファルトに触れたそばから融けていく。差したビニール傘に張り付いた雪も、あっという間に水になる。ぽたりぽたりと落ちる水滴は、靴の爪先を軽く濡らしていった。

 三月の空気はどこか柔らかで。だから季節外れのこの雪は、ちっとも積もりそうになかった。積もらずに、ただ融ける雪を見て思う。


 叶わない恋心だって、こんな風に簡単に融けてなくなればいいのにと。



 待ち合わせ場所は、いつものファミレスだった。過疎化が進んだ、ほとんど田舎と呼べるこの地元に、二十四時間営業の店はコンビニを除いて一軒しかない。国道沿いのファミレスは、そういう意味では貴重な溜まり場だった。

 もう何度ここへ来ただろう。ここへ来る時はいつも三人だった。ずっと三人だった。それがいつまでも永遠に続くと思っていた。


 でも。融けない雪がないように。ずっと続いていたことも、いつか終わりが来てしまう。


 三月。暦の上では春だけど。雪が融けだす春だけど。


 ──ここはまだ冬だった。何かを終わらせるにふさわしい、冬だった。


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