何といっても、サイダーのガラス瓶を開けて泡立つあの瞬間が、脳裏に鮮やかに蘇ってきます。小学生の幼い男女が地元の小さな商店で買うサイダー。なけなしの百円玉を小さな手のひらにぎゅっと握り締め、爽やかな喉越しを夢見てわくわくしたことは誰しもあるのではないでしょうか?
大学生になった主人公は、新しい恋愛に踏み出すかどうかの選択を否応なく迫られます。美人からのお誘いに浮かれながらも、心のどこかで抱いた違和感。それを必死に思い出そうとしていたその時、ふと転がり出てきたのは――。
青く透き通ったガラスの色に、私は思わず「青春」を重ねてしまいました。甘酸っぱくて至らなくて、綺麗だけど全然爽やかじゃなくて。喉に少しつかえるようなその感触は、まさしく青春そのもののように感じます。夏の夕陽に照らされた縁側で、涼やかな風に吹かれながら読みたい一作です。