第5話 大学院生

隕石が落ちてきたという報道、私の目は動画に釘付けになった。

厳密には動画群。

撮影されて投稿された動画は長いものでも30秒程度だった。

カメラが次々に壊れていくから。

撮影している人も、カメラと一緒に次々と蒸発したり圧死したりしてるんだろうね。


1本だけ、画期的な動画を見つけた。

定点カメラではなくて、衝撃波や地殻のツナミから逃げ続けるドローンか何かによる空撮映像。

最後はもちろん追いつかれて壊れるんだけど…操縦者とドローン、どちらが先に壊れたんだろう。


ソーシャルメディアでは、現場を見てきたという写真がバズってる。

そんなことあるわけないじゃない。

よく出来たCG、くだらない。


あとは、どこかの偉い学者が監修した巨大隕石落下のシミュレーション動画をリピート再生してる。

「人類滅亡」というタグがついて、昔のコメディ番組で使われていたBGMが乗せられているの。

あまりに不謹慎極まりないと思ったけど、面白いものは面白いんだもの。


研究室で、みんなと話し合う。


「これで生物滅亡かな?」

「熱に強い生物は耐えるかも?」

「でもマントルのツナミだぜ?1000℃くらいだよ?クマムシだって151℃までらしいよ?」

「衝突の影響で、高温になる間もないまま宇宙空間まで吹き飛ばされてるかも?」

「なるほど、クマムシはそうやって宇宙を旅することになるのか」

「どこかの惑星に到着して新たな生態系が誕生するのかもね」

「俺たちは他の惑星の生命の起源になるのか」


外が明るくなってきた。

もうすぐだ。


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