第6話 インタビューワー

「世界が終わるとき、あなたは何をしますか?」


街頭インタビューをしていた。今日日、街頭インタビューに答えてくれる人も随分と減った。


「家に籠ってゲームしてると思います」と言っていた男。

─こいつはカットだ、オンエアされることはない


「彼といっしよに過ごします」と言うのは腕を組んだバカップル。

─その前に別れてしまえ


「あらどうしましょうかねぇ、おほほ」と笑うのはおばちゃんだ。

─おほほじゃないよ、質問に答えろよ


うんざりする。


「仮定の話には答えられない、その時期、そして前後の状況がわからないと答えることは不可能だ」

─こいつはむつかしく考えすぎなんだよ、これ街頭インタビューだぞ


「俺は死なない」

─ガキかよ


もう嫌だ、本当に嫌だ。


街頭インタビューワー歴25年だが、年々答えが劣化していく。

この国はこのままで大丈夫なんだろうか。


─こんな世の中に誰がした


と言ったのは、どこぞの有名ミュージシャンだったか。

30年近く選挙権を持っていた人間の言うことじゃないな、1億分の1くらいは、自分にも責任がある。


「世界が終わるとき、あなたは何をしますか?」

「家族で旅行に出かけると思います」

「カロリーを気にせず美味しいものを食べます」

「会社に辞表を叩きつけますね」

─そうだよ、こういうのを待っていた


その時、社用ケータイが鳴った。


「街頭インタビューは中止だ、巨大隕石が降ってきたぞ、人類は滅亡だ」

「滅亡するんですか、いつ?」

「わからん」


─世界が終わるとき、私は何をしますか?


決まっている。

会社の命令に背いて街頭インタビューを続けた。


「世界が終わりますが、あなたは何をしますか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る