第3話 超能力者

なぜだかわからないが、俺には特殊能力がある。

瞬間移動、つまりテレポーテーションというやつだ。

アレが落ちてきたとき、俺は見に行って写真を撮った。

俺自身が蒸発する前に再びテレポーテーションで安全な場所に戻ったのだが、数ミリ秒だけ見た景色が忘れられない。


まさに地獄だった。


いや地獄にテレポートしたことはないので詳しいことはわからないが、地獄というものがあるならこういうところなのだろうなと思った。


「やべぇぞ!落下地点は地獄だぞ!」と、ソーシャルメディアに写真を投稿する。


一瞬でバズる。


大半は絶望感に満ち溢れた反応だが、「よくできたCGだな」「嘘乙」などといった批判や懐疑的なコメントも多い。

嘘だと思ったら行ってみろと書き込みたいのをグッと堪える。


大手メディアから、報道に使うので写真の使用許可を得たいとの旨、連絡が来た。

「視聴者撮影」というテロップを付けるのだろう。

そのメディアは、自身が保有する写真や映像を使用するのに許諾料を課している。

従ってその同額を請求したが、返事は返ってこなかった。

自分のものを使う場合は金を払わせ、他人のものを使う際には金は出さないという姿勢らしい。


某ウェブサイトからは、投稿を掲載したいというオファーがあった。

これは俺が撮った写真ではなく、俺が投稿して公表したものを紹介する事例であるから、好きなように使ってくれと返事をした。


もう何でもいい。

どうせ遠からず、自分たちの目で地獄を見ることになるのだ。


ちなみに俺のテレポーテーション能力には、おそらく距離的限界がない。

あったとしても、100光年くらいまでは問題なく移動出来る。

こういう時のために、既に宇宙の様々な惑星を探索してあり、居住できそうな惑星の目星もついている。

もちろん、その過程で変な惑星に行って何度も死にかけたわけだが。


だが俺一人が生き残ってどうするのだろう。

繁殖の見込みがない状況で、生物として残存する意味はあるのだろうか。


俺はテレポーテーションを使わないことに決めた。

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