第6話

 目を覚まし顔を上げると正面の黒板が私の視界を占領し、窓から差し込む夕日が私を照らしていた。

「なんで教室で寝てたんだろう」

 理由は分からないが疲れていたのだろう。

 頭が冴えずに思考が纏まらない。

 本能に赴くままにロッカーから鞄を取り出し背負いそのまま廊下に出る。

 校内は静まり返っているが時折、部活に勤しむ生徒達の賑やかな笑い声や顧問の怒鳴り声が聞こえてくる。

「怒鳴って良くなるなら苦労しないのにね」

 他人事ながら嫌気が差してしまう。

 ずっとここに居ても仕方なく、踵を返し帰ろうとした時に背後から私を呼ぶ声がして振り返る。

 彼が私を呼んでいるようだ。

「探したよ、何してるの?」

「さあ? 自分でもよく分からないけど」

「面白いこと言うね。何かあったの? 気晴らしに今日どこか寄り道していこうか?」

 確かに何かはあった。だけどそれは思い出そうとすると儚く消える夢のようで・・・・・・

 彼の隣にいたい。今よりも更に彼と触れ合いたい。そうは思っていたけれど、いざその場所に身を置くとどうにしていいのかわからずに狼狽える私がいる。

 そんな私は見て彼は、私に手を引き

「とりあえず帰ろうか」

「そうだね」

 心臓が跳ね上がる。心音が体から口から漏れてしまいそうだ。それを必死に抑えながら彼の隣を歩む。

 曲がり角を右折すると彼を見失う。

 繋がれていた手も解かれていて、暗闇の廊下に差し込む窓から反射した陽射しが私の視界を奪い――


 ――そして景色が晴れると私はベッドの上で天を仰いでいた。

 真っ白な天井。

 そして私を暖かく迎えるように照りつける朝日。

「そうだ、帰ってきてそのまま寝ちゃったんだ。」

 日差しを浴びて汗をかいている。前髪は濡れてぐしゃぐしゃ、制服も蒸れていて少し気分が悪い。

 晩御飯も食べずに寝たからお腹も空いている。

 とりあえずこの汗ばんだ体をどうにかしたくてシャワーを浴びることにした。

 冷水を浴びて寝ぼけた頭をリセットしたいところだけど寒いのは嫌なので止めておいた。

 お湯の温度を見ると44℃に設定されている。恐らく昨日最後にシャワーを浴びたのは父だろう。

 私にとっての適温に設定を変える。

 最初は冷水が出るので少し待ち、温水に変わったところで頭からシャワーを浴びる。

 これでうだうだした思考も完全に吹き飛んだ事だろう。

 シャワーを浴び終え自室に戻る。

 化粧水と乳液で保湿をして髪をドライヤーで乾かす。

 するとお腹が空いていることに気が付いた。

「何か食べるものないかな」

 リビングへと向かえば昨日の晩御飯の残りにでもありつけるかもしれないと思いリビングへ向かったが――

 ――残念ながら残り物はなく空腹を持て余すことになった。

 コンビニに行きたいけど、どうせこの後に学校に行くからその時にしようと思い暇を潰すことにした。

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