ハイスピードアクション描写の練習
@proto0803
1
霧が立ち込める中世ヨーロッパの面影が残る街を一台のスポーツカーが疾走していた。ロンドンか、パリか、どこか分からない街を走る銀色の車は異様に見えた。ましてや人がいない町では尚更だった。
ドライバーは若い男だった。見た目は20にも満たないような顔つきだったが、前を見つめる眼に一欠の迷いは存在していなかった。
やがてロータリーに差し掛かると、わずかに弧を描いた後また別の通りへと向かった。そしてゆっくりとペダルを踏み、徐々にタコメーターの針を上げていった。
700メートル先に検問があることをHUD(ヘッドアップディスプレイ)が警告する。それでもスピードを緩めることはしなかった。レッドゾーンに差し掛かろうとしたところで、男は左手で機器を操作した。フロントのライトの両側がゆっくりと動き、中に搭載されているミサイルを発射できるようにした。フロントガラスには照準の他、目標までの距離といった情報を映し出していた。
検問では警官たちが慌ただしくパトカーで道を塞ぎ、軽機関銃を構え待ち構えていた。既にドライバーの身元は割れており、車を止めるように命じても応じてくれない相手だと分かっていたからだ。
ドライバーはハンドルを握りしめ、ミサイルの照準を合わせる。時速180キロに達した。目標までの距離が縮まる。ロックオンが完了した。右のステアリングスポークに付けられたボタンを押すと、ミサイルが発射され、警察車両は火を噴いた。傍にいた警官たちは衝撃で吹き飛び、中には火だるまになって地面でのたうち回る者もいた。
すぐさま警官たちは体を起こし、反撃を試みる。連続した銃声が街中でこだました。弾は数発命中するが、ガラス一つ割ることはできなかった。警官が装備する軽機関銃は9mm弾を使用するが、防弾ガラスと内部に防弾プレートを入れた車とでは勝敗は言うまでもなかった。
車はそのまま走り去り、郊外のハイウェイを目指した。夜明けは間近だった。
ハイスピードアクション描写の練習 @proto0803
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ハイスピードアクション描写の練習の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます