第12話 〜突沸〜


 ごちそうさまでした。

 え、おかわりをしますか。

 冷めてしまっているので温め直しますね。


 これは、状況によってはかなり危険な行為となります。味噌汁は「突沸」という現象を起こし、爆発をすることがあるのです。


 水は、皆さんも知っている通り、「固体」である氷、「液体」である水、「気体」である水蒸気という「三態」の状態を持っています。

 水以外の物質もこのような性質を持つものがありますが、特に水の三態はその「相変化」が温度の基準となっています。固体から液体、液体から固体に変化するときの水の温度が0℃とされています。また、液体の全体が気体に変化するときの水の温度が100℃です。

 そして、この液体から気体への変化の書き方に、と入れたのには意味があります。液体から気体への相変化、すなわち「気化」は2つの現象があるのです。


 1つ目の現象は「蒸発」です。これは、常温でも常に起きていて、コップの水がだんだん減っていく、洗濯物が乾くなどはこの蒸発によるものです。これは、気化が液体の表面からのみ起きています。

 2つ目の現象は「沸騰」です。鍋の中でぐらぐらとお湯が沸き、気泡がぼこぼこ沸いている状態の時、気化は水の表面だけでなく鍋の底からも起きています。水が全体として気化を始める温度が「沸点」であり、100℃なのです。


 この水全体が気化を始めるという現象は、注意しなければならないことがあります。水は気化するときに体積が大きく増えます。およそ、18㎖の水が1240倍の22.4ℓもの気体になるのです。

 周囲の気圧が高いときには、押さえつけられて体積が増えにくくなりますから、沸騰の温度が上がります。逆に、気圧が低いときには体積が増えやすくなりますから、沸騰の温度が下がります。


 例えば富士山の山頂で水は88℃で沸騰してしまうのですが、圧力鍋では120℃と沸点が上がります。沸点とは条件によって変わってしまう温度なのです。


 これらを理解していただいた上で、もう一つ水の三態には例外的な現象があります。「過冷却」と「過熱」です。


 液体の水は、凍らないそのままの状態で0℃以下になることがあり、これを過冷却と言います。この状態は、物質の特性に合わないことなのでちょっとしたショックを与えることで一気に凍ってしまいます。

 また、同じように液体の水は、沸騰しないままで100℃を超えてしまうことがあります。これもちょっとしたショックを与えることで一気に沸騰し、鍋の状況によっては爆発的に吹き上がってしまうことがあり極めて危険です。

 これを「突沸」といいます。


 理科の実験ですと「沸騰石」を入れてこれを防ぎますが、単純にかき混ぜることでも防ぐことができます。

 味噌汁は突沸を起こしやすいので、温める際にはときどきかき回すことを忘れないようにしましょう。

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