第11話 〜pH〜
近日中に、ここについては改稿いたします。
さて、いただいた味噌汁、美味しかったでしょうか。
どのような具が入っていたでしょうか。
ここで、色々と定番とも言える味噌汁の具を思い浮かべてください。一つ、大きな特徴がありますね。それは、味噌汁には酸っぱい味の具はあまり入らないということです。
それはなぜでしょうか。
ここで、味覚を代表するものが酸性なのか、アルカリ性なのかを見てみましょう。なお、酸性やアルカリ性を表す単位は、「pH」です。昔はドイツ語読みで「ペーハー」と読んでいましたが、今は「ピーエッチ」と英語読みするのが標準になっています。0から14までの単位で、7が中性、7から数字が下がるほど酸性となり、7から数字が上がるほどアルカリ性となります。
甘味を代表する砂糖の水溶液は、ほぼ中性(pH7)です。
塩味を代表する食塩の水溶液は、ほぼ中性(pH7)です。
酸味を代表する酢は強酸性(pH3)です。
苦味を代表するにがりの水溶液は、弱酸性(pH6)です。
うま味を代表するグルタミン酸ですが、これもグルタミン酸ナトリウムとして考えるとほぼ中性(pH7)です。
一般的に私たちが食べていて美味しいと感じている食材は、肉、野菜、嗜好品に渡ってpH5から7に集まっています。果物、ヨーグルトなど酸っぱいと感じるものがpH3から4に集まっています。例外はワカメなどの海藻類で、これはpH10くらいとかなり強いアルカリ性です。
したがって、pHが7より下がったらすぐに酸っぱいと感じるわけではありません。また、苦いものはアルカリ性であるという見方はありますが、それも例外が多いのです。
味噌は種類にもよりますが、pH4.5から5に収まっています。なので、具の入った味噌汁はpH5から6に収まります。また、上記のように、食塩やうま味は中性ですから、塩っぱい味噌汁も甘口の味噌汁も、だしの濃い味噌汁も薄い味噌汁もpHへの影響は少ないのです。
さらに、味噌はさまざまな成分が複雑に組み合わされており、「緩衝」作用があります。少しならば、酸性やアルカリ性の強いものが入っても、pHは大きく動かないのです。
わかめとじゃがいもの味噌汁を考えてみましょう。通常のレシピですと、一人分でわかめは10g、じゃがいもは40g、できあがりは200gくらいでしょう。
重量比で考えると、わかめは5%しかありません。さらに、それが均等に味噌汁に溶け込むわけでもありません。なので、わかめを具にしたからといって、緩衝作用のある味噌汁はいきなりアルカリ性にはなりません。たくさん入れればアルカリ性になるでしょうが、通常のレシピであれば影響は少ないのです。
さて、ここに強酸性の、例えばpH3であるリンゴを味噌汁の具として考えてみましょう。リンゴは小さいものでも300gほどもあります。わかめと同じように10グラムであればさほど影響しないでしょうが、一個の1/30しか入れないというのもあまり想定しにくいでしょう。先ほどのじゃがいもと同じ量を入れたら、味噌汁全体の20%です。これだけ入れば、緩衝作用を超え、pHは低く傾きます。
ましてや、うさぎ型に切ったりんごを2つ入れたら、70gにもなりますから、35%です。
これはもう、確実に酸っぱい味噌汁ができあがります。これは、普段の食生活から大きく外れたものになりますから、あまり受け入れられなくなるのではないでしょうか。
ここから、もう一つ推測できることがあります。
味が極端なものや香りが強いものを薬味として利用しますが、これも個人の好みを別とするのであれば、5%以下が適量なのではないかということです。
pHという観点からも、レシピの食材の量を推測することはできるのです。
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※わかめはpH10という強いアルカリ性の食品です。なので、これを人が美味しいと感じるpH5まで下げて食べると考えると、酢の物というのは極めて化学的に理に適った調理法といえます。とはいえ、美味しいと感じる段階よりも酢を入れすぎて、酸性になり過ぎたものを食べる機会が多いのが残念です。
※わかめ、じゃがいもは、食品として述べる時はひらがなで、生物の特徴を述べる時はカタカナで表記しています。
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