第10話 〜電気伝導率〜
美味しい味噌汁ですが、もしかしたら高血圧を心配して、「塩分濃度計」で味噌汁の塩分を計っている家庭もあるかもしれませんね。
塩分濃度計は味噌に含まれる「食塩」である「塩化ナトリウム、(NaCl)」の量を計っていますが、水に溶けた塩の量は具体的にはどうやって計るのでしょうか。
重さだけでも体積だけでも食塩の濃度は計れませんし、両方計ったとしても具入りの味噌汁は純粋な塩化ナトリウム溶液ではありませんから、密度を計るようなわけにはいきません。
塩分濃度計は複数の原理のものがありますが、食品の計測に使いやすく複雑な操作を必要としないものは「電気伝導率」を計っています。
それでは、この電気伝導率とはなんでしょうか。
蒸留水は電気をほとんど流しません。
しかし、塩化ナトリウムを水に溶かした「水溶液」は電気を通します。塩化ナトリウムはナトリウム(Na)と塩素(Cl)の「原子」が結びついてできていますが、通常の状態ではこの二つは固く結びついていて離れることはありません。
ですが、これを水に溶かすと、Na+とCl-に分かれます。すなわち、食塩水は電気的な+と−の原子を含んでいる水の状態であり、これを「電解液」といいます。
そして、Na+とはナトリウム原子が−の性質である「電子」を一つ失った結果、+の状態になっています。Cl-は塩素原子が−の性質である電子を一つ余計に持っている結果、−の状態になっています。
なので、電気的に+の原子は電子を受けとり、電気的に−の原子は電子を放出することで、電気を流しているように見えるのです。
このような仕組みですから、電気的に+や−の原子を含まない蒸留水は電気を流さないのです。
電気伝導率とは、この電気の流れやすさを示したものです。電気抵抗が、電気の流れにくさを表しているのと対照的ですね。
なお、食塩に限らず水に溶けて電気的に+と−の粒に分かれた状態のことを「イオン」といいます。Na+とCl-についている+と−は、「電荷」を示しています。なので、このイオンが多いほど、電気はよく流れるように見えます。
結果として、味噌汁の電気の流れやすさを調べれば、食塩濃度が高いか低いかを簡易に測定できることになるのです。
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※だし成分もイオンとして電気を流す働きがありますが、食塩による電気の流しやすさに比べると極めて弱く、誤差の範囲です。
※本文の中では省略しましたが、水溶液にし、Na+とCl-に−である「電子」を補ったり放出させたりすることでイオンの状態でなくし、ナトリウムだけ、塩素だけを取り出すことができるようになります。これを「電気分解」といいます。
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