第8話 〜「濡れ」るということ〜
さあ、味噌汁の中の具を食べて見ましょうか。
まずは、お箸を味噌汁の中に、そっと差し入れてみましょう。そして、ゆっくり箸を味噌汁の水面から持ち上げてみてください。
箸を味噌汁から引き抜く時に、味噌汁の水面から水が箸に沿って軽く持ち上がっていることが観察できると思います。
箸は、漆やウレタンで仕上げたもの、プラスチックのもの、割り箸などの木や竹を削ったままのものなどいろいろな種類がありますが、皆さんの使っている箸はどのようなものでしょうか。
その箸の材質や仕上げによって、味噌汁の水面から箸に沿って水が持ち上がる高さは異なります。自宅でならば自分の箸と家族の箸での違い、割り箸との違いの確認ができるでしょう。また、自分の箸での状況を覚えておいて、外食の時に比べてみるのも良いでしょう。
この水の持ち上がり方は、基本的に表面が滑らかなものほど「濡れ」にくく、水が持ち上がりにくい傾向があります。
「濡れ」とは、科学的に表現するならば、固体表面に接触している気体が液体に置き換えられる現象といわれますが、ここでの理解では直感的に使っている「濡れる」という単語での理解で問題ありません。
濡れやすさ、濡れにくさは、「親水性」、「撥水性」という言葉で現されますが、テフロン仕上げのフライパンのように極めて濡れにくいものは「超撥水」と言われます。
この濡れるという現象を科学的にまとめ公式化した人は、トマス・ヤングという今から200年前のイギリスの物理学者です。「光の波動説」、「光の三原色」を唱え、「エネルギー」という単語を初めて使用し、様々な物質の「弾性」の定数である「ヤング率」として名を残した大科学者です。
この人にとっては、日常のすべてが観察の対象だったのでしょうね。
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